EMT 930 RECORD PLAYER このプレーヤーは工業製品としての性能では他のビンテージ品と比較しても中々良く出来た製品と思いますが、全く欠点が無い訳ではありません。オリジナルのサスペンションや利便性を考慮したオートトランス式電源トランス、シーメンスやボッシュ製進相コンデンサー、ターンテーブルシート等々、当時はそれ程粗悪なものという認識もなく使用していたのでしょうが、高品位な音楽再生を望む方ならパーツの質が再生音に与える影響を再認識する必要が有るでしょう。
KOETSU MC CARTRIDGE ダイナベクター507MK2の高感度アームで最大限の性能を発揮できるカートリッジといえば光悦しかないでしょう。と勝手に決め込んでいますが未だにこれを超えるようなクオリティーを持つカートリッジにはお耳にかかったことがないので相変わらず使い続けています。ちなみに、最近のカートリッジにはネオジムマグネットを使用しているものが多いということのようですが、一聴して元気のある音なのだが奥行き感がなく平面的な音の傾向になりがちです。例えれば純鉄コアトランスとパーマロイコアトランスの音の違いのような感じが有り、いわゆる自然界の音のように静まり返った空間から輪郭のくっきりした音が鳴り響くというイメージには程遠い気がします。カートリッジの音の良し悪しは弱音時の静けさや空気感をどう表現するかにかかっているのではないでしょうか。また、カートリッジケースには樹脂製からアルミなど多種多様なものが存在しますが、強大な針先のエネルギーを受け止める側の素材によって音の傾向が決まるのは当然で、物理振動を吸収せずにはじく方向の材質が絶対に必要です。結局、水晶のような高硬度で均一な共振周波数を持つ天然素材(人工水晶)しかありません。本来ならカートリッジケースも水晶製をと思ったりもしますが、シェルならまだしもカートリッジケースとなると懐具合などというレベルの話ではなさそうなので、比較的硬度の高い天然石のヒスイやメノウケース入りで妥協しているところです。
INSULATOR 現在使用しているインシュレーターは全てオーディオリプラス製です。カートリッジ用シェルやカートリッジスペーサーから始まって、アームベース周りやモーター支持フレーム、ターンテーブルシートにレコードスタビライザー、930プレーヤー台の足、進相コンデンサーユニットの台、角型フレームラックの足と各棚板の接地面、信号系の全ての機器の設置足など多くのリプラス製水晶を使用しています。その数たるやスピーカーバッフルの足やバッフル裏面の補強棚も含めると大小合わせて100個以上になるのではないかと思われます。中でも最近導入したGR-SSタイプを最も効果的であろうと思われる4D22ppプリアンプ本体の設置にスパイクインシュレーターとの組み合わせで使用してみたところ、開いた口が塞がらないほどの音質改善効果が得られました。このGR-SSをMCトランスのピンポイント設置に変更すればまたまた激変するのではないかという兆候は100HG-SS-HRの試聴でも十分感じることが出来ましたので、やはり微小信号部分ほど効果が高いということに間違いはないと思います。確かに微小信号部分での僅かな付帯音でもそのまま増幅されてスピーカーから出るわけですから当然のことと思います。言い換えればカートリッジケース(シェルも含めて)やレコード盤の物理振動がそのまま増幅されてスピーカーから付帯音となって再生されていることになります。深堀すればレコードのレーベルによる音の違いも塩化ビニールを含めた素材の含有率などによって変化する盤鳴きの影響が相当大きいのではないかという気にもなって来ます。そうなるとレーベルの違いによる音の違いを云々する前に極力盤鳴きを抑え、出来るだけ同一条件下で再生してみる必要が有りそうです。 PREAMPLIFIER AUDIO RACK SPEAKER BAFFLE MC STEPUP TRANS
MC STEPUP TRANSFORMER WE純鉄リングコアを使用したMCカートリッジ用昇圧トランスです。入出力端子はWE製を使用し設置用インシューレーターにはAudio Replas
OPT-100HG-SS/HR+RSI-M6を使用しています。WE555Wや594Aスピーカーを使用していた20~40代の頃はWE261Bや208PなどにSPUやTYPE-C、FIRCHILD
225A等を組み合わせてジャズやロックなどを楽しんでいましたが、KLL439スピーカーの導入とともWE純鉄リングコアを使ったMCトランスを使うようになり、ようやくクラシック音楽が聴けるようになったという気がしました。仕事柄多くの著名な?トランスを聴く機会も有りましたが、古典的なローコンプライアンスカートリッジ+パーマロイコア型MC昇圧トランスあたりで情緒的に音楽を鳴らすならそれなりに雰囲気も有りあれやこれやと音の違いを楽しむことも出来るでしょうが、クラシックレコードのオーディオファイル盤あたりを再生して、音の良いコンサートホールで聴いているかのような気分にさせる程の実在感を求めるなら、WE系マイクトランスの流用などという安易な方法では役不足感が否めないでしょう。2枚目の画像はWE201型インプットトランス系のギャップのない純鉄コアを使用したMC昇圧トランスです。こちらはより一層誇張感のない自然な音楽表現が持ち味です。
PREAMPLIFIER WE 417A - WE 404A - 6AB7 - INT - 4D22pp - 6Kpp Output Trans の4段構成プリアンプです。比較的大がかりなプリアンプで電源部は別シャーシになっています。音の良いプリアンプを実現する上で「ハイゲインで有りながら音楽的SNに優れたアンプ」という相反する到達点を目指すことに異論はないはずですが、そこがプリアンプ製作のむずかしさであり面白さでも有ると思います。確かに微小信号部分を多く含む大規模なプリアンプの構築には、ある程度の経験と臨機応変な対応力が少々必要になるかもしれませんが、マランツ7などの既製品やガレージメーカ―製作のウエストレックスやWE系ラインアンプ&マイクアンプ等を改造したプリアンプにそれほど良い音のする製品がないという現実を踏まえた上でのチャレンジですから、それなりの熱意と根気が必要になります。
LCR TYPE RIAA EQUALIZER & WE705B FADER TYPE ATTENUATOR
WE製純鉄リングコアを使用したRIAA EQUALIZERとDAVEN製ATTのロータリースイッチを使用した600Ω型アッテネーターです。ATTはある意味必要悪のような存在だからこそ極力音質劣化の少ない質の良いパーツを使い単純な回路構成で構築すべきだと思います。著名なオーディオメーカーが使用しているからとかWEアンプにも使っていたからなどという殆ど根拠のない理由でのパーツ選びはそろそろ止めにした方が遠回りせずに済むのではないでしょうか。
4D32pp POWER AMPLIFIER
本アンプは新しく製作し直した6AB7 - 6AG7 - INT - 4D32pp - Output Trans の3段構成パワーアンプです。
+B供給用電源には371Bと705Aをパラレル接続にて使用しています。本機では当店が目指す音の方向性を具体化するためのプロトタイプとして多くのノウハウを蓄積して来た初代4D32アンプの完成度を維持するために、敢えて回路や定数などを変更せずに使用中のパーツもそのまま移行することとしました。これにより新たに導入した黄銅製シャーシやセラミック端子台、WEリッツワイヤーなどの影響が再生音にどのように反映されるかなども把握出来るのではないかという新たな期待を込めての製作となりました。結果としてはシャーシが既製品のアルミ材から黄銅製に替わったことによる情報量の多さが、オーケストラや管弦楽のような編成の多い楽曲の再生がより一層生きいきと再現できるようになり、当初の目論がほぼ達成されたのではないかという気になりましたが、音出しから1週間ほど経過しエージングも進み大分安定した音になってきたところで再生音のバランスを取るために再調整をやってみました。ドライブ段6AG7の動作を僅かに変更してみたところ劇的な改善が得られ、ようやく初代4D32アンプを超える次世代アンプの完成が現実のものとなって来たという気がしています。この球の凄いところは、一般的にいわれる「図体のでかい球は大雑把な音がする」という定説をいとも簡単に覆してくれるだけのF特の広さと繊細さ、緻密さ、圧倒的なエネルギー感など、音楽再生に必要な全てを備えているかのような気にさせてくれるところです。もちろん前段を構成している2本のメタル管も並みの電圧増幅管ではありません。WE系ST型電圧増幅管などの付帯音の多い球は論外としても、比較的評価の高い6SN7系や6C5などの3極管が明らかに寝ぼけて聞こえてしまうくらい本アンプに使用した6AB7や6AG7の3結は付帯音が少なくリニアな特性を持っています。5極管を3結で使用するなら初めから3極管で良いのでは?という声も有りますが、直線性の良い単5極管を敢えて3結(G2はPと同電位)で使用することで、重心が低く付帯音の少ない力感のある音になりますので、皆さんも一度試してみて下さい。
KLANGFILM KLL439 SPEAKER SYSTEM 1200×1500サイズのメイプル集成材をシェラック仕上げにした平面バッフルです。平面バッフルではスピーカーを設置しただけで十分良い音がするなどということは間違っても有りませんから、必ず何らかの方法でルームチューニングが必要になります。
ルームチューニングのポイントはライブな環境のオーディオルームの定在波を上手く処理することだと勝手に思っています。低域の出過ぎや全体的に音がボケるなどの原因は定在波を上手く処理することで殆ど解決します。低域の抜けの悪さをアンプのせいにする前にルームチューニングをやることが大切です。しかし、そうはいっても単純に定在波を吸収して減らすのではダメで、如何にピークを作らずに拡散させるかがポイントになります。吸音効果の高い材料で定在波を吸収しバランスを取るルームチューニング材では一聴して効果が上がったかのように感じることが有っても、落ち着いて試聴を重ねれば明らかに情報量が少なくなっていることに気づくはずです。
さて、平面バッフルを設置する際どのように支持するかは問題の多いところでもありますが、基本的には響きを止めずにがっちり固定することですが、これが意外に難しいのです。中にはバッフルの不安定さを解消するために左右の端に足を付けて設置している方がいますが、それではせっかくバッフルの端まで響いた振動を止めてしまうことになります。私の設置方法はバッフルが左右に倒れない程度まで出来る限り中央寄りに足を取り付け、バッフルの一番上側から斜め後方に角材を振り下ろして先ほどの足の最後部と連結しています。ここはバッフル全体の振動エネルギーを受止めるところなのでより硬質な桜材などを使いました。また、後方側の連結部は左右に開くようにし、振り下ろした角材は足の内側に固定しますが、足の外側で連結すると音が濁り易くなります。なお、ローエンドまでクリアな低域を出すために後方に延びた足の上にやや厚め(15mm)のファブリックボードを設置しました。そして先ほど敷いた板と足の間やバッフル裏側の桟にはリプラス製水晶インシュレーターを挟み、足そのものも床に直置きせずに50mm径リプラス製水晶を前方と後方の端に設置しています。そして床と水晶の間にはファブリックボードを敷いて床材の吸音を出来るだけ防ぐようにしています。こうすることで、低域が出ないなどと酷評されることの多いKL439から軽くて歯切れの良い低域が朗々と再現されるようになりました。