TURNTABLE EMT-930 MOTOR CONTROL UNIT
EMT-930を選んだ理由について、バロック系クラシック音楽を再生することの多い私としては何としても光悦スペシャルバージョンカートリッジを上手く鳴らしたいという思いから、必然的にトレース能力の高いダイナミックバランス型トーンアームが不可欠ということで、唯一無二のダイナベクターDV507MKUしかないと結論付け、このアームが使える精度の高いモーターはといえばEMT-930しか無いだろうということになった(残念ながらロングアーム仕様の927ではこのアームが使えない)。ただし、このモーターを使うにあたって進相コンデンサー&サープレッサー抵抗の交換と220V外部供給用アイソレーショントランスの導入が不可欠だ。その進相コンデンサーユニットは当初3mm厚程のNASA Fabric BoardにHH.Smith Terminal Stripを使用し、Bluejacket
Resistorと積層セラミック+EM Silver Micaで構成したものを使っていたのだが、1ヵ月ほど前3mm厚の真鍮板にTektronix
Ceramic Terminal StripとWE Ceramic Terminal Postを取り付けたものに変更してみた。CR類はそのまま移行しオーディオリプラス製スモールサイズインシュレーターを使って設置しただけという単純に物理振動効果を狙った実験でしたが、結果的には信じがたいほどの音質改善となりました。
WE 18A FUSE BLOCK WE KS14169 FUSE BLOCK
2023/12/01:数日前、私と同じオイロダインを愛用する友人からEMT-927のヒューズを小容量のものに替えたら音が良くなったという情報を得て、早速930の220VACラインに使用しているヒューズを見直してみることにした。今までは規定値通りの1/2A(200V~仕様時)を使っていたのだが、私の930ではモーター意外に電力の供給先が無いので1/4Aで事足りるはずだと踏んで1/10Aや18/100Aを単独または2本パラレルで使用してみた。やはり小容量のものをパラレルで使用した方がより一層誇張感のない自然な音になって来る。このヒューズの音を知ってしまうと一般的な真空管式アンプ等に多用されるLITTELやBUSSMANなどのスローブローヒューズは音が鈍くて使えない。本来ヒューズなど無いに越したことはないのだが安全性を考えると使わざるを得ない。それならば極力音に影響の少ないものを見つけるしかない〜ということで白羽の矢が立ったのがWEが電話回線や測定器用に開発した即断型
70 SERIES FUSEという訳だ。溶断を可視化した速断ヒューズが1930〜40年代頃から存在していたとは今更ながら驚く。しかしながら、このヒューズを使うには溶断すると容量によって色分けされている部分が飛び出すタイプの専用ヒューズホルダーが必要になる。
TURNTABLE SHEET & RECORD STABILIZER TS-OPT300HR & OPS-1HR
ゴム系ターンテーブルシートは単なる滑り止めの効果以外に何も期待出来るものは有りませんが、吸音性の高い革やフェルト、付帯音の多い多結晶硬質ガラスなども先ず以って好結果は得られません。敢えていうならば、最も物理振動の影響を受けやすい記録媒体であるアナログレコードの材質に対して何の対策もせずに録音の良し悪しやレーベルによる音の違いを云々するのは如何にも片手落ちではないかと思います。信号の入り口で汚染された音楽信号は徐々に増幅され更なる付帯音と共にスピーカーを通して空間へと放たれるということを考えれば、その後のルームチューニングなどにも多大な悪影響を与えることは推して知るべしではないか。要するに、情報量を減らさずに且つ余計な変調のかからない最も優れた素材ということを第一に考えるならばオーディオリプラス製水晶シート以外に選択肢などないのではないかと思います。また、アナログレコード再生に必ず必要なセンタースピンドルで使用するレコードスタビライザーも水晶製が不可欠で、如何に着色の少ない信号をMCトランスやプリアンプに伝送するかという目的を達成するためにはターンテーブルシート同様極めて重要です。高周波領域で使用する水晶振動子に着目した人工水晶製スタビライザーやインシュレーター、ターンテーブルシートなどは物理振動を可聴帯よりも高い共振周波数で拡散させることでオーディオ帯域に影響を与えずに効果的に振動を処理する方法として、これ以上有効な方法は先ず以って存在しないのではないかと思います。十数年前からオーディオリプラス製品の音質改善効果を実感してきた私としてはAudio
Replas社の真骨頂ともいえる水晶製ターンテーブルシートやスタビライザーの導入が必ずやHi-Fiアナログ再生への最短距離であると確信しています。
NOISE SUPPRESSOR 電源ノイズや微小信号回路への電磁誘導ノイズなどありとあらゆるノイズがHi-Fiオーディオ再生に悪影響を与えます。私の場合はEMT 930へのAC供給ライン、PREAMP & POWER AMPへのDC供給ライン、その他にPHONO CABLE、SPEAKER CABLEなど合計7ヶ所にオーディオリプラス製CNS-7000SZノイズスタビライザーを使用していますが、どの接続ケーブルに使用しても音の粗さが無くなり穏やかな傾向の音になります。しかし周波数レスポンスがそれ程良いとはいえない装置や少々高域が暴れ気味な装置では本製品の導入によって「音に覇気が無くなった」などの誤った印象を持たれる方もおりますので、先ずは装置全体のグレードを上げることが先決ではないかと思います。この手の音質改善アイテムやルームチューニング材などの適切な使用は間違いなく大人しい傾向の音に変化しますから、その上で音楽のリアリティーが失われないような方向にまとめ上げるのが、装置構築の正攻法といえるのではないかと思います。
MC STEPUP TRANS
現用のMCカートリッジ用昇圧トランスはWE純鉄リングコアやWE201型コアを使用してリメイクしたものです。入出力端子はWE製を使用し設置用インシューレーターにはAudio
Replas OPT-100HG-SS/HR+RSI-M6を使用しています。WE555Wや594Aスピーカーを使用していた20~40代の頃はWE261Bや208PなどにSPUやTYPE-C、FIRCHILD
225A等を組み合わせてジャズやロックなどを楽しんでいましたが、KLL439スピーカーの導入と共にWE純鉄リングコアを使ったMCトランスを使うようになり、ようやくクラシック音楽が聴けるようになったという気がしました。画像右はWE201型トランスをリメイクしたもので、より誇張感のない自然な音楽表現が特徴です。仕事がら比較的多くのMCカートリッジ用昇圧トランスなるものを聴く機会に恵まれましたが、古典的なローコンプライアンス型カートリッジ+パーマロイコア型MC昇圧トランスあたりで情緒的に音楽を鳴らすならそれなりに雰囲気も有りあれやこれやと音の違いを楽しむことも出来るでしょうが、クラシックレコードのオーディオファイル盤あたりを再生した際に音の良いコンサートホールの上席にでも身を置いているかのような気分にさせてくれる程のクオリティーを求めるなら、WE系マイクトランスやライントランスなどの流用や親指の先ほどの小型パーマロイコア型MCトランス辺りでは役不足感が否めないのではないかと思います。 2024.02.21:WEトランスについて、WE製コアそのものは材料としてみればとても質の高い(純度が高いという意味ではありません)ものだと思いますが、こと出来上がったトランスとなると30年代後半ごろまでの低透磁率純鉄コア型トランスでは昇圧比を稼ぐため(当時の真空管の増幅度の低さと不良率の高さを考慮するとトランスでゲインを稼ぐ事の方が理にかなっていた?)の策として巻き数を目いっぱい多くした結果が巻線間の浮遊容量や鉄損&巻線抵抗の増大によりナローレンジでとても現代の音楽鑑賞用には適さない(当時は殆ど通信用目的なので帯域幅は300~3Kも有れば十分だったが)。また、それ以降のパーマロイコア型トランスになると一転高透磁率コアゆえに巻き数も少なくて済みF特も広くなった代わりに、磁気ヒステリシスの影響を受けやすく減衰特性の良くない高透磁率コアの性質が影響し、歯切れの悪いベールのかかった再生音になり易いという結果になってしまったのです(現存するMCトランスの殆どがこの部類に入ると思われます)。私たちが求めるHi-Fi再生用MCカートリッジステップアップトランスというアナログレコード再生の根幹を成す重要な昇圧トランスにこれぞというものが無いに等しいという状況を踏まえれば、可能な限り質の良い(ここでは比較的ブロードな磁気特性を有する純鉄コアを指します)コアを使い、そのカートリッジのインピーダンスに適合するトランスを製作するしかないということになるのではないかと思います。
2024.03.06:MCトランスのハム対策についてですが、ビンテージオーディオ再生装置の中でもっとも外来ノイズや周辺機器から発生する漏洩フラックスの影響を受け易いトランスはMCカートリッジ用昇圧トランスということになりますが、一流メーカーかどうかの根拠はさて置き販売網の確立と宣伝効果などによってそれなりの評価を得ているトランスではどのような状況下で使用してもそれ程大きなノイズなどの問題が発生しないように多重シールドを施して製品化されています。
それ程でもない音の理由のひとつにこの過剰ともいえるほどのシールドが原因になっているとも考えられます。もちろんそれ以前にコアの材質も含めて透磁率の高いパーマロイ系コア(立ち上がりは早いが減衰カーブが非常に悪い)に髪の毛よりも細いマグネットワイヤーを巻き、ガチガチにシールドを施せば音質劣化が著しいことは当然といえば当然です。もっとも、それらのことなどメーカーサイドとしては百も承知の上で製作しているはずですが、営利目的でそつのないものを製作販売するというメーカーとしての目論見も理解できないわけではありません。しかしながら、これらの一流メーカー製トランスが私達多くの音楽ファンが望んでいるであろう「コンサートホール並みの音で音楽を楽しみたい」という欲求にどれだけ応えられているのだろうかという疑問を抱かれる方も少なくないのではないかと思います。流石に旧態依然とした透磁率の低い大型コアを使用すれば外来ノイズや誘導ノイズに弱いであろうことは容易に理解出来ます。ましてや、オルトフォン用などの1.5~3Ωのローインピーダンスカートリッジ用ではSNの悪化が一層顕著になることは当然です。しかしながら、それでも何とか最小限度のSN対策をしてこの劇的に音楽性の豊かなMCトランスを使ってみたいという誘惑にかられ、超古典的なWE製純鉄リングコアや201型ギャップ無純鉄コアを使用したMCトランスの製作に踏み切ったという訳なのです。
このような理由を元にトランス内部には全く磁気シールドなどの対策を施していませんので可能な限り周囲からのノイズを拾わないような環境下で使用することが肝要です。その上で最小限度のシールド材をトランスの外側に取り付けることで実用可能なレベルまでSNを上げることが出来るはずです。
もっとも、周囲からノイズ発生源を可能な限り遠ざけることやノイズ発生源側の電磁ノイズを封じ込めるなどの対策をする事の方がより効果的な場合も有ります。特にネオン管や蛍光灯などの放電管(タンガーバルブや水銀整流管なども含まれます)を使用している機器からは盛大な放電ノイズが発生していますから、先ずはそれらの対策を先んじる必要が有ります。
私の装置ではMCトランスやプリアンプを設置している外壁のすぐそばにエアコンの室外機が設置して有り、これはまずいということで業者さんにお願いして3mほど離して再設置してもらったことが有りました(木造なので磁気シールドに対しては全く無防備な状態でした)。また、これらのインバーター機器などからのノイズ発生を考慮してアイソレーショントランンスや電源クリーナーを導入することも音質改善効果を含めて大変有効な手段の一つになると思います。
PREAMPLIFIER WE 417A-WE 404A-6AB7-INT-4D22pp-6Kpp:600Ω/35W Output Trans の4段構成プリアンプです。比較的大がかりなプリアンプで高圧整流回路、高圧電源平滑回路、ヒーターDC点火回路は全て別シャーシにより構成されています。エネルギーレスポンスが良く実在感とプレゼンス感の有るハイファイプリアンプを実現する為には「ハイゲインで有りながら音楽的SN感に優れた付帯音の少ない前置アンプ」という到達点を目指すことにそれ程異論はないと思われますが、そこがプリアンプ製作のむずかしさでもあり面白さでも有ります。確かに微小信号部分を多く含む大規模なプリアンプの構築には、ある程度の経験値や臨機応変な対応力が必要となりますが、マランツやマッキントッシュなどの既製品やWestrexやWE系ラインアンプを改造したガレージメーカー製プリアンプなどにこれぞという程のものが先ず以って無いという現状を踏まえた上でのチャレンジですから、千里眼的部品選びなどの入念な計画性は当然のことながら、長期の継続的製作意欲が必要となることは致し方のないことかもしれません。それにしても、これほどのアナログブームが到来しているご時世にもかかわらず、オーディオ専門誌や技術雑誌などにこれぞと思う程の真空管式アナログ再生用プリアンプなるものの製作記事が全くといっていいほど掲載されないというのも不可解なことです。嘗てはビンテージオーディオ界の牽引役とまでいわれた日本のオーディオ誌に溢れんばかりの製作記事を投稿されていた諸先輩技術者の方々には今一度奮起して頂きたいものです。