カートリッジ用シェル本体もカートリッジボディの一部という考え方で良いと思いますが、物理振動の共振点が可聴帯内に有るような素材ではその共振周波数によって確実に影響を受けますので私の装置ではオーディオリプラス製RHS-1HRを使っています。また、ターンテーブル面とダイナベクターアームの高さ調整範囲の関係で、カートリッジとシェルの間にオーディオリプラスカートリッジスペーサーRHS-25-SSを使用しています。以前は初期タイプのRSC-25HRを使っていましたが、少し取付ネジを締め過ぎたせいでクラックが入ってしまったのをきっかけに新製品の25-SSにしてみました。こんな小さなものでも微小信号部分だけあって相当威力があるものだと改めて実感させられました。また、シェルとアームの接続部分には、一般的にゴム系のリングを使用しているのが普通ですが私の装置ではジックスリングを使っています。音質的には劇的といっていいくらいの変わり様です。シェルリードも市販のもので良ければ苦労しないで済むのですが、絶縁素材に化学材料を使用したワイヤーでは付帯音が多くて使い物になりません。ということでここでもWEオールドワイヤーの登場となりますが、この部分では音の良いWE2A
INDUCTOR WIREではちょっと太すぎるので少し細めのWE77A RET LITZ WIREにシェラックを含浸したものを使っています。
AUDIO RACK
現用のオーディオラックは中空角型鉄パイプを溶接したもので、ピンポイント接点用の棚板には15mm厚のファブリックボードを使っています。意外にも金属ケースに入った機器の設置に水晶などを使用した場合、設置側の材料によっては思ったような効果が得られないことが有ります。例えば機器側から金属シャーシ底板→水晶インシュレーター→木製ラックよりも金属シャーシ→水晶インシュレーター→ファブリックボードの方が濁りの少ない音になります。以前は何も考えずにメイプル集成材にシェラック仕上げをした木製ラックを使用していましたが、リプラス製ピンポイント+水晶インシュレーター+ファブリックボード+角型中空パイプ式オーディオラックの音の良さを知ってしまった以上二度と元には戻れません。
CONNECTION CABLE & CONNECTOR アームケーブルからスピーカーケーブルまで多くのケーブルで接続しなければならないオーディオ装置ではケーブルの材質や構造が重要になって来ます。WE系のシルク&エナメル絶縁単線やWEリングコアから外した細めのシルクエナメル単線を奇数本束ねたものなどを長年使ってきましたが、装置のグレードが上がるにつれて分解能の高いリッツ構造のケーブルに移行しました。ここまで装置の追い込みが進んで来ると、各機器間の接続ケーブルの長さや絶縁材料等によって音がコロコロ変化してきます。私の場合はフォノケーブルの長さ1.2mとMCトランスからプリアンプまでの長さを固定し、他の機器間のケーブルの長さを試聴しながら決めました。経験値としてひとついえることは、どのケーブルでも長過ぎてはダメで各接続ケーブルの長さが0.5〜1.2m位で収まるような位置に各機器を設置し、部屋の広さに応じてSPケーブルの長さを調整するというやり方が大きな音質劣化を起こさない合理的な方法だと思います。いずれにしても、質の良い銅線と天然の絶縁素材を使用し可能な限り化学材料を使わずに製作することが音質劣化の少ない接続ケーブル製作の基本になると思います。
WE 2A INDUCTOR LITZ WIRE PIN CABLE(100%シルク絶縁+シェラック含浸) & WE P/R
INSULATOR
使用しているインシュレーターは全てオーディオリプラス製です。狙っている音の方向性が同じということを前提とするなら、物理振動をコントロールするためのアクセサリーやルームチューニング材の選定は基本的に同一メーカーのものを使用することの方が理にかなっていると思います。私の装置ではカートリッジ用シェルやカートリッジスペーサーから始まって、アームベース周りやモーター支持フレーム、ターンテーブルシートにレコードスタビライザー、930プレーヤーの足、進相コンデンサーユニットの台、角型中空アングルラックの足と各棚板の接地面、信号系の全ての機器の設置にオーディオリプラス製水晶を使用しています。ちなみに、最近導入したGR-SSタイプを最も効果的であろうと思われる4D22ppプリアンプ本体の設置にスパイクインシュレーターとの組み合わせで使用してみたところ劇的といって良いほどの音質改善効果が有りました。このGR-SSをMCトランスのピンポイント設置に変更すればまたまた激変するのではないかという兆候は100HG-SS-HRでの試聴でも十分感じることが出来ました。さて時は過ぎ、スピーカーボックスの支持に使用しているAudio
Replas 100HG-SS-HRをGR-SSに交換し劇的なまでの音質改善を達成されたお客様の装置を聴かせて頂く機会に恵まれ、その音の素晴らしさに唖然とし居ても立っても居られないほどの衝撃に駆られた私は翌日GR-SSを注文してしまいました。私のオイロダインは平面バッフル型なので前方支持の二か所にGR-SSを、後方二か所には従来から前方支持に使用していた100HG-SS-HRを移動すればことが足りるので懐具合と相談して何とか4個組1セットで済ませることが出来ました。一人では不可能と思われた交換作業も思いの他スムーズに出来たことも有り早速音の変化の度合いを検証してみることにしました。ARCHIV盤の中でも鳴らしにくいといわれている2533421や2533425では確かに高域の分解能がより一層良くなり中低域も幾分穏やかな鳴り方に変わってきたものの激変とまでは行かないようです。やはり「暫くエージングが必要」との先人諸氏の経験談が如何に的を得たアドバイスであったかを改めて実感することとなりました。その後の変容ぶりはアンプなどのパーツや回路をどう変更しようとも到達し得ないであろう飛躍的な分解能のアップと誇張感のない穏やかな再生音は当初の期待を大幅に上回る結果となり、超難盤と目されるH.MUNDI
1C165-99972/3やHYPERION SALOMON SQ TELEFUNKEN SWAT9518A STIL 2107s75なども穏やかで自然な音になった気がします。また、つい先日、日頃から親しくして頂いているお客様から「例のHT電源もオーディオリプラス製水晶インシュレーターを使って設置したらとても良かった」との情報を頂き早速私もやってみました。30mm
DIA×20mmのリプラス製インシュレーターを今まで使っていたプリとパワーのインターステージトランスの上から外し、2台のセレニウム電源シャーシの設置に使用しただけの簡単なテストです。今までは床側に15mm厚のファブリックボードを使っているせいも有り、まぁ〜ゴム足じゃ話にならんが同じファブリック製30mm
DIA×15mmの足ならそれ程引けを取らないだろうなどと高を括っていた。しかし、いざ交換してみると重心が低くなり落ち着いた印象がより一層増した感が有り、これはまずいぞ。何故HT電源ごときに何を施してもコロコロと音が変化するのか。それならと、HT電源の底板を3mm厚の真鍮板にし、30mm水晶で設置してみた。見事なまでの音の佇まいと楽器の一音一音に表情の有る様は生演奏以外では耳にしたことのない衝撃的音楽表現が現実のものとなったような気がしています。
NOISE SUPPRESSOR
電源ノイズや微小信号回路への電磁誘導ノイズなどありとあらゆるノイズがHi-Fiオーディオ再生に悪影響を与えます。私の場合はEMT 930へのAC供給ライン、PREAMP
& POWER AMPへのDC供給ライン、その他にPHONO CABLE、SPEAKER CABLEなど合計7ヶ所にオーディオリプラス製CNS-7000SZノイズスタビライザーを使用していますが、どの接続ケーブルに使用しても音の粗さが無くなり穏やかな傾向の音になります。しかし、直熱管アンプなどの周波数レスポンスがそれ程良いとはいえない装置や高域が少し暴れ気味な装置では本製品の多用によって音に覇気が無くなるなどの印象を持つ方もおられるようですので、先ずは装置全体のグレードを上げることが先決なのではないかと思います。
MC STEPUP TRANS
MATCHING TRANS WE IRON RING CORE WE 201 TYPE CORE
こちらはパワーアンプに接続するマッチングトランスとして製作したものです。私のアンプはプリもパワーも比較的ハイゲインなためトランスのレシオ比を高く取る必要がありませんので5倍程の昇圧比(600Ω:15KΩ)で製作しました。このトランスのコアはWE201型インプットや61A/B RETなどを解体したものです。今回はケースによる音の違いを確認するためにWEトロイダル型トランス用鉄ケースに封入してみました。このトランスの最も魅力的なところはF特が広く誇張感のないニュートラルな音楽表現をしてくれるところです。入力系トランスについて少し余談になりますが、インプットトランスではレシオ比を大きくしたもの程トランス特有の癖の強い音の傾向になります。L分によって構成されるインピーダンス変換回路では真空管増幅のような直線性の良さやフラットな周波数レスポンスを持っているわけでは有りません。それはしばしばトランスの2次側を純抵抗でシャントしてF特を平坦化する必要が有ることが、如何にフラットな特性を有していないかを表す根拠のひとつです。ちなみにWEなどの古典アンプ(主に劇場用アンプ)ではインターステージの2次側をシャントしない場合も有りますが、内部抵抗の高いひ弱な3極管辺りでドライブする場合や高域特性のそれ程良くない装置において特定の周波数帯を持ち上げることで人の声などの明瞭度を上げようと意図していることが理解できます。したがって、このような意図的な周波数特性のイコライジングが、本来私たちが目指すハイフィデリティー再生の考え方とは少し違った方向だということも認識した上で装置全体の回路構築を進めなければならないと思います。
FINAL POWER AMPLIFIER
4D32pp POWER AMPLIFIER WE 201 TYPE INTERSTAGE
本アンプは新しく製作し直した6AB7-6AG7-INT(WE201 CORE)-4D32pp-5Kpp:0-8-16Ω/50W Output
Trans の3段構成で+B供給用電源には371Bと705Aをパラレル接続にしています。4D32というパワー管の凄いところは、一般的な「図体の大きな球は大雑把な音がする」という定説をいとも簡単に覆してくれるだけのF特の広さと繊細さ、緻密さ、圧倒的なエネルギー感など、音楽再生に必要な増幅管としての全てを備えているかのような気にさせてくれるところです。もちろん前段を構成している2本のメタル管も並みの電圧増幅管ではありません。私の装置ではWE系ST型電圧増幅管のように図体がデカい割には内部抵抗が高くプレート電流が僅か1~3mA程度しか流せないようなひ弱な球などはなから選択肢に有りませんが、比較的マトモな音のするKEN-RAD
6C5や6SN7でさえ明らかに寝ぼけて聴こえてしまうくらい本機に使用しているKEN-RAD6AB7や6AG7の3結はパワフルでシャープな名刀の切れ味のような音がします。要約すれば物理振動が少なく直線性に優れた単5極管を3結で使用することで、並みの3極管や盛大な物理振動で音を濁してしまうWE系電圧増幅管とは桁違いの広帯域特性と重心の低い安定感を兼ね備えた強靭な前段増幅回路を構成することが出来るということです。