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VINTAGE AUDIO PROJECT

 Vintage Audio Project

                                      UPDATE:2023/09/22
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TURNTABLE

     EMT-930         Motor Control Unit      220V Isolation Trans

先ずはターンテーブルの選択についてですが、光悦スペシャルバージョンカートリッジを何としても上手く鳴らしたいという思いから、このカートリッジにベストなアームはどれかと思案した結果、トレース能力の高いアームが必要なバロック系クラシックを再生することの多い私にとってはDV507MKU+光悦という組み合わせしかないとの思いから、このアームが使えるモーターはといえばEMT-930しか無いだろうということで決めました。927も魅力的ではあるもののロングアーム意外は付かないので除外しました。確かに927や930はドイツ製品らしく機械加工的にはそれなりに精度の高い工業製品として納得感が有りますが、MPコンデンサーやスライド式抵抗などの電気部品はあまりにもお粗末なので質の良いパーツに交換することにしました。最終的にはモーター回転用220Vは外付けアイソレーショントランス(画像右)から供給することとし、元の一次側オートトランス式の電源トランスは針先チェック用などのランプへの供給のみに使用することにしました。最近、モーター用潤滑オイルをEMT純正と唱われているモリブデン入りのものからワコーテクニカルのチタンオイルなるものに交換してみました。メーカーが提唱しているチタンコーティングの効果が出ているのかどうかは分かりませんが、今のところ回転音も静かで何の支障もなく使えていますので、敢えて入手し難い純正オイルにこだわる必要も無いと思われます。先ほどの進相コンデンサーユニットですが、今までは3mm厚程のNASA Fabric BoardにHH.Smith Terminal Stripを使用し、Bluejacket Resistorと積層セラミック+EM Silver Micaで構成したものを使っていましたが、1ヵ月ほど前に3mm厚の真鍮板にTektronix Ceramic Terminal StripとWECO Ceramic Terminal Postを取り付けたものに変更してみました。CR類はそのまま移行しオーディオリプラス製スモールサイズインシュレーターを使って設置しただけという単純に物理振動効果を狙っただけの実験でしたが、結果的にはにわかには信じがたいほどの劇的音質改善となりました。上の画像中央が改善後のEMT-930用(こちらは実験用に製作したものなので真鍮板のサイズが少し大きめです)で927用はこちら
です。ちなみに、927用と930用ではCの値が2.6〜2.7MFと1.75MFの違いが有るのみです。効果の度合いはその装置全体のクオリティーに依存することは当然としても、この程度の簡単な変更で驚くほどの音質改善効果が得られるのですからやってみる価値は十分あると思います。


TURNTABLE SHEET & RECORD STABILIZER

Audio Replas TS-OPT300-HR/OPS-1HR & OPS-1SHR

ゴム系ターンテーブルシートは単なる滑り止めの効果以外に何も期待出来るものは有りませんが、革製やフェルト、硬質ガラスなども余計な不帯音が耳につきますのでお薦めしません。高域端の歪感や全帯域での刺激的な音の傾向のほとんどはこの部分で発生しているといっても過言ではありません。敢えていえば、最も物理振動の影響を受けやすいこのこの部分に何の対策もせずに音の良し悪しやレーベルによる音の違いを云々するのは片手落ちではないかと思います。この部分で汚染された音楽信号はさらに増幅されスピーカーから空間に放たれます。したがって、その後の音質改善対策やルームチューニングなどの効果にも悪影響を与えることは推して知るべきです。結局のところ、情報量を減らさずに余計な変調のかからない最も優れた素材ということを第一に考えればオーディオリプラス製水晶シート以外の選択肢はありません。数年前からは一層効果の高いハイグレードタイプも限定販売されていますので是非とも使ってみて下さい。この水晶シートをEMT-930で使う場合どうしても必要になるのがメインターンテーブルと水晶シートの間に使うサブベースです。私の場合入手可能なアメリカNASA御用達のファブリックボードの中から厚さ1/2インチサイズを選び、メインターンテーブルより少し大きめの325mm径でカットしました。厚さはダイナベクーDV507MK2アームの高さ調整範囲とセンタースピンドルの出っ張り具合を考慮して1/2インチサイズにしました。また、アナログレコード再生に必要なセンタースピンドルで使用するスタビライザーにはオーディオリプラスOPS-1HRを使用しています。ここも如何に着色の少ない信号をMCトランスやプリアンプに伝送するかという意味ではきわめて重要なポイントになります。「盤によっては何となく中高域部分での混濁感や高域端の歪が気になる」という装置では多くの場合この部分が原因となっているようです。GHz帯まで安定した振動が可能な水晶発振素子に着目して製作された水晶スタビライザーやインシュレーターは、物理振動を可聴帯よりも高い共振周波数で拡散させることで電気信号に影響を与えずに効果的に振動を除外する方法として、これ以上の解決策は無いのではないかと思います。


TONEARM

Dynavector DV-507MK2

このトーンアームほどトレース能力の高いものを知りません。20代の頃から同タイプのDV-505を使っていたせいも有るのかもしれませんが、スタティックバランス型アームの安定感のない音が嫌いな私としては現行のDV-507mkU以外の選択肢は有りませんでした。世間ではFR64Sや66Sがもてはやされていた時期でも有りましたが、ステンレスという合金特有の振動伝達スピードの鈍さと重針圧用という感度の鈍さがクラシック音楽を聴く機会の多い私の耳には留まりませんでした。また、軽針圧用としてアルミ製の64FX等も有りましたが質量分離型アームのトレース能力に太刀打ちできるほどのものではないという理由で除外しました。ロングアームが珍重されるような風潮が有りますが、インサイドフォースや物理振動の到達距離が長いために反復時間が長いというメリットは有るものの、感度の悪さに起因するトレース能力の低さなどを考えるとそれ程のメリットが有るわけでもないことが分かります。結局はトレース能力が高く間接音の表現力に優れたしなやかさを持つボロンカンチレバーとプラチナマグネット&WEオールドマグネットワイヤー+ヒスイ&メノウボディというカートリッジ界のF1 CAR的存在のハイスペック光悦カートリッジの能力を最大限に引き出すための条件を満たすものとしてダイナベクターDV-507MK2意外に無いということになりました。


MC CARTRIDGE

   JADE(ヒスイ)        AGATE(メノウ)

ダイナベクター507mkUの高感度アームで最高の性能を発揮出来るカートリッジといえばスペシャルバージョン光悦カートリッジ以外にないと決めて使い続けています。画像左は光悦創業者が長年温存していた原石から切り出した気泡の全く無い最高級ヒスイケースで、右側は結晶化する際に鉄分が多く浸透した為に茶褐色化し、より一層高硬度に形成されたメノウケースです。どちらもしなやかで間接音の再現に長けたトレース能力の高いボロンカンチレバー+プラチナマグネット+WE OLD WIRE 仕様という超ハイスペックカートリッジです。しかしながら、あまりのトレース能力の高さと高分解能ゆえに少々古い録音のオーケストラや管弦楽などを再生した際、音楽の一体感のようなものが少々再現されにくいと感じることが有ります。敢えていうなら少しコンプライアンスの低い旧態依然とした設計のカートリッジの方が50〜60年代前半頃のモノラル→ステレオ移行期あたりの録音をそつなく再生してくれるということなのかもしれません。このような観点からすると光悦カートリッジのメノウ&ヒスイタイプなどのハイスペックカートリッジはアナログレコードの黄金期ともいえる60年代末期から80年代初頭頃のいわゆるオーディオファイル盤 Philips 6769022 6769024 6769097 やDG 2530559 2531329 あたりの再生にターゲットを絞った方が良さそうな気もします。いずれにしても、小手先のごまかしなど一切受け入れてくれそうにないオイロダインKLL439+平面バッフルという類い稀なるスピーカーシステムを使い続ける限り、繊細で残響の長いバロック系などの再生においては独壇場とも思える程のリアリティーを発揮してくれるスペシャルバージョン光悦カートリッジをおいそれと否定するわけにはいかないということなのです。ついでにカートリッジ関連パーツについてひとこと、長期間MCカートリッジを使い続けていると偶には磁気抜きが必要になることは皆さんご存じの通りです。私の場合はORBのカートリッジエキサイターというものを使っていますがこれが中々便利なもので、硬くなってしまったダンパーの動きをスムーズにするのと同時に磁化したムービングコイルの磁気抜きも出来てしまうという優れモノなのです。また、スライラスクリーナーは10年以上前からドクタースタイラスを使っています。チップの接着材に悪影響がなく劇的に洗浄効果の高いクリーナーとして今のところこれに勝るモノがないという気がします。


CARTRIDGE SHELL & SPACER

Audio Replas RHS-1HR & RCS-25-SS

カートリッジ用シェル本体もカートリッジボディの一部という考え方で良いと思いますが、物理振動の共振点が可聴帯内に有るような素材ではその共振周波数によって確実に影響を受けますので私の装置ではオーディオリプラス製RHS-1HRを使っています。また、ターンテーブル面とダイナベクターアームの高さ調整範囲の関係で、カートリッジとシェルの間にオーディオリプラスカートリッジスペーサーRHS-25-SSを使用しています。以前は初期タイプのRSC-25HRを使っていましたが、少し取付ネジを締め過ぎたせいでクラックが入ってしまったのをきっかけに新製品の25-SSにしてみました。こんな小さなものでも微小信号部分だけあって相当威力があるものだと改めて実感させられました。また、シェルとアームの接続部分には、一般的にゴム系のリングを使用しているのが普通ですが私の装置ではジックスリングを使っています。音質的には劇的といっていいくらいの変わり様です。シェルリードも市販のもので良ければ苦労しないで済むのですが、絶縁素材に化学材料を使用したワイヤーでは付帯音が多くて使い物になりません。ということでここでもWEオールドワイヤーの登場となりますが、この部分では音の良いWE2A INDUCTOR WIREではちょっと太すぎるので少し細めのWE77A RET LITZ WIREにシェラックを含浸したものを使っています。



AUDIO RACK

現用のオーディオラックは中空角型鉄パイプを溶接したもので、ピンポイント接点用の棚板には15mm厚のファブリックボードを使っています。意外にも金属ケースに入った機器の設置に水晶などを使用した場合、設置側の材料によっては思ったような効果が得られないことが有ります。例えば機器側から金属シャーシ底板→水晶インシュレーター→木製ラックよりも金属シャーシ→水晶インシュレーター→ファブリックボードの方が濁りの少ない音になります。以前は何も考えずにメイプル集成材にシェラック仕上げをした木製ラックを使用していましたが、リプラス製ピンポイント+水晶インシュレーター+ファブリックボード+角型中空パイプ式オーディオラックの音の良さを知ってしまった以上二度と元には戻れません。



CONNECTION CABLE & CONNECTOR
アームケーブルからスピーカーケーブルまで多くのケーブルで接続しなければならないオーディオ装置ではケーブルの材質や構造が重要になって来ます。WE系のシルク&エナメル絶縁単線やWEリングコアから外した細めのシルクエナメル単線を奇数本束ねたものなどを長年使ってきましたが、装置のグレードが上がるにつれて分解能の高いリッツ構造のケーブルに移行しました。ここまで装置の追い込みが進んで来ると、各機器間の接続ケーブルの長さや絶縁材料等によって音がコロコロ変化してきます。私の場合はフォノケーブルの長さ1.2mとMCトランスからプリアンプまでの長さを固定し、他の機器間のケーブルの長さを試聴しながら決めました。経験値としてひとついえることは、どのケーブルでも長過ぎてはダメで各接続ケーブルの長さが0.5〜1.2m位で収まるような位置に各機器を設置し、部屋の広さに応じてSPケーブルの長さを調整するというやり方が大きな音質劣化を起こさない合理的な方法だと思います。いずれにしても、質の良い銅線と天然の絶縁素材を使用し可能な限り化学材料を使わずに製作することが音質劣化の少ない接続ケーブル製作の基本になると思います。

WE 2A INDUCTOR LITZ WIRE PIN CABLE(100%シルク絶縁+シェラック含浸) & WE P/R



INSULATOR



使用しているインシュレーターは全てオーディオリプラス製です。狙っている音の方向性が同じということを前提とするなら、物理振動をコントロールするためのアクセサリーやルームチューニング材の選定は基本的に同一メーカーのものを使用することの方が理にかなっていると思います。私の装置ではカートリッジ用シェルやカートリッジスペーサーから始まって、アームベース周りやモーター支持フレーム、ターンテーブルシートにレコードスタビライザー、930プレーヤーの足、進相コンデンサーユニットの台、角型中空アングルラックの足と各棚板の接地面、信号系の全ての機器の設置にオーディオリプラス製水晶を使用しています。ちなみに、最近導入したGR-SSタイプを最も効果的であろうと思われる4D22ppプリアンプ本体の設置にスパイクインシュレーターとの組み合わせで使用してみたところ劇的といって良いほどの音質改善効果が有りました。このGR-SSをMCトランスのピンポイント設置に変更すればまたまた激変するのではないかという兆候は100HG-SS-HRでの試聴でも十分感じることが出来ました。さて時は過ぎ、スピーカーボックスの支持に使用しているAudio Replas 100HG-SS-HRをGR-SSに交換し劇的なまでの音質改善を達成されたお客様の装置を聴かせて頂く機会に恵まれ、その音の素晴らしさに唖然とし居ても立っても居られないほどの衝撃に駆られた私は翌日GR-SSを注文してしまいました。私のオイロダインは平面バッフル型なので前方支持の二か所にGR-SSを、後方二か所には従来から前方支持に使用していた100HG-SS-HRを移動すればことが足りるので懐具合と相談して何とか4個組1セットで済ませることが出来ました。一人では不可能と思われた交換作業も思いの他スムーズに出来たことも有り早速音の変化の度合いを検証してみることにしました。ARCHIV盤の中でも鳴らしにくいといわれている25334212533425では確かに高域の分解能がより一層良くなり中低域も幾分穏やかな鳴り方に変わってきたものの激変とまでは行かないようです。やはり「暫くエージングが必要」との先人諸氏の経験談が如何に的を得たアドバイスであったかを改めて実感することとなりました。その後の変容ぶりはアンプなどのパーツや回路をどう変更しようとも到達し得ないであろう飛躍的な分解能のアップと誇張感のない穏やかな再生音は当初の期待を大幅に上回る結果となり、超難盤と目されるH.MUNDI 1C165-99972/3やHYPERION SALOMON SQ TELEFUNKEN SWAT9518A STIL 2107s75なども穏やかで自然な音になった気がします。また、つい先日、日頃から親しくして頂いているお客様から「例のHT電源もオーディオリプラス製水晶インシュレーターを使って設置したらとても良かった」との情報を頂き早速私もやってみました。30mm DIA×20mmのリプラス製インシュレーターを今まで使っていたプリとパワーのインターステージトランスの上から外し、2台のセレニウム電源シャーシの設置に使用しただけの簡単なテストです。今までは床側に15mm厚のファブリックボードを使っているせいも有り、まぁ〜ゴム足じゃ話にならんが同じファブリック製30mm DIA×15mmの足ならそれ程引けを取らないだろうなどと高を括っていた。しかし、いざ交換してみると重心が低くなり落ち着いた印象がより一層増した感が有り、これはまずいぞ。何故HT電源ごときに何を施してもコロコロと音が変化するのか。それならと、HT電源の底板を3mm厚の真鍮板にし、30mm水晶で設置してみた。見事なまでの音の佇まいと楽器の一音一音に表情の有る様は生演奏以外では耳にしたことのない衝撃的音楽表現が現実のものとなったような気がしています。


NOISE SUPPRESSOR



電源ノイズや微小信号回路への電磁誘導ノイズなどありとあらゆるノイズがHi-Fiオーディオ再生に悪影響を与えます。私の場合はEMT 930へのAC供給ライン、PREAMP & POWER AMPへのDC供給ライン、その他にPHONO CABLE、SPEAKER CABLEなど合計7ヶ所にオーディオリプラス製CNS-7000SZノイズスタビライザーを使用していますが、どの接続ケーブルに使用しても音の粗さが無くなり穏やかな傾向の音になります。しかし、直熱管アンプなどの周波数レスポンスがそれ程良いとはいえない装置や高域が少し暴れ気味な装置では本製品の多用によって音に覇気が無くなるなどの印象を持つ方もおられるようですので、先ずは装置全体のグレードを上げることが先決なのではないかと思います。


MC STEPUP TRANS



現用のMCカートリッジ用昇圧トランスはWE純鉄リングコアやWE201型コアを使用してリメイクしたものです。入出力端子はWE製を使用し設置用インシューレーターにはAudio Replas OPT-100HG-SS/HR+RSI-M6を使用しています。WE555Wや594Aスピーカーを使用していた20~40代の頃はWE261Bや208PなどにSPUやTYPE-C、FIRCHILD 225A等を組み合わせてジャズやロックなどを楽しんでいましたが、KLL439スピーカーの導入と共にWE純鉄リングコアを使ったMCトランスを使うようになり、ようやくクラシック音楽が聴けるようになったという気がします。画像右はWE201型トランスをリメイクしたものです。仕事がら比較的多くのMCカートリッジ用昇圧トランスなるものを聴く機会に恵まれましたが、古典的なローコンプライアンス型カートリッジ+パーマロイコア型MC昇圧トランスあたりで情緒的に音楽を鳴らすならそれなりに雰囲気も有りあれやこれやと音の違いを楽しむことも出来るでしょうが、クラシックレコードのオーディオファイル盤あたりを再生して、音の良いコンサートホールの上席にでも身を置いているかのような気分にさせてくれる程のクオリティーを求めるなら、WE系マイクトランスやライントランスの流用や親指の先ほどもない小型パーマロイコア型MCトランスあたりでは如何にも役不足感が否めないのではないかと思います。



PREAMPLIFIER



WE 417A-WE 404A-6AB7-INT(WE201 CORE)-4D22pp-6Kpp:600Ω/35W Output Trans の4段構成プリアンプです。比較的大がかりなプリアンプで電源部は別シャーシになっています。エネルギーバランスが良く実在感の有るプリアンプを実現する為には「ハイゲインで有りながら音楽的SN感に優れた付帯音の少ない前置アンプ」という到達点を目指すことに異論はないと思いますが、そこがプリアンプ製作のむずかしさでもあり面白さでも有ると思います。確かに微小信号部分を多く含む大規模なプリアンプの構築には、ある程度の経験値や臨機応変な対応力が必要になりますが、マランツやマッキントッシュなどの既製品やWestrexやWE系ラインアンプを改造したガレージメーカー製プリアンプなどにこれぞという程のものが皆無という現実を踏まえた上でのチャレンジですから、千里眼的部品選びと入念な計画性は当然のことながら、長期の持続的制作意欲が必要となることは致し方のない事だと思います。それにしても、これほどのアナログブームが到来しているご時世にもかかわらずオーディオ専門誌や技術雑誌などにこれぞと思う程の真空管式アナログ再生用プリアンプなるものの製作記事が全くといっていいほど掲載されないというのも不可解なことです。かつてはビンテージオーディオ界の牽引役とまでいわれた日本の技術専門誌に溢れんばかりの製作記事を投稿されていた諸先生方には今一度奮起して頂きたいものです。


RIAA LCR EQUALIZER & ATTENUATOR



WE製純鉄リングコアを使用したRIAA EQUALIZERとDAVEN製ATTのロータリースイッチ部分を使用した600Ω型アッテネーターです。ATTはある意味必要悪のようなものですから極力音質劣化の少ない質の良いパーツを使い単純な回路構成で構築すべきだと思います。部品選びということでいえば、有名オーディオメーカーが使用しているとかWEアンプにも使っていたからなどというおおよそ根拠のないパーツ選びはそろそろ止めにした方が遠回りせずに済むのではないかと思います。私の場合は抵抗はSPRAGUE BLLUEJACKET。コンデンサーは用途によって使い別けますが、カップリングコンにはSILVER MICA、デカップリングやB電源にはAEROVOX & SPRAGUE OIL CAP、MALLORY TC75A/B他。ヒーターDC点火用にはSPRAGUE 53D、HG CERAMICなど。真空管ソケットはEBY/ELCOセラミックタイプなど全てのパーツの材質や物理振動などを考慮した上で使用しています。いずれにしても、いくら高度な電気技術や回路技術を持ち合わせていても、音楽にそれ程興味のない技術屋?が然したる吟味もせずに利益優先で?選んだ真空管やトランス&パーツなどで製作した程度の装置では、多くの音楽ファンが求めているであろうコンサートホール並みの実在感やプレゼンス感を再現したいという願いなど望むべくもないものとなってしまうのではないかと思います。



MATCHING TRANS

 
    WE IRON RING CORE     WE 201 TYPE CORE

こちらはパワーアンプに接続するマッチングトランスとして製作したものです。私のアンプはプリもパワーも比較的ハイゲインなためトランスのレシオ比を高く取る必要がありませんので5倍程の昇圧比(600Ω:15KΩ)で製作しました。このトランスのコアはWE201型インプットや61A/B RETなどを解体したものです。今回はケースによる音の違いを確認するためにWEトロイダル型トランス用鉄ケースに封入してみました。このトランスの最も魅力的なところはF特が広く誇張感のないニュートラルな音楽表現をしてくれるところです。入力系トランスについて少し余談になりますが、インプットトランスではレシオ比を大きくしたもの程トランス特有の癖の強い音の傾向になります。L分によって構成されるインピーダンス変換回路では真空管増幅のような直線性の良さやフラットな周波数レスポンスを持っているわけでは有りません。それはしばしばトランスの2次側を純抵抗でシャントしてF特を平坦化する必要が有ることが、如何にフラットな特性を有していないかを表す根拠のひとつです。ちなみにWEなどの古典アンプ(主に劇場用アンプ)ではインターステージの2次側をシャントしない場合も有りますが、内部抵抗の高いひ弱な3極管辺りでドライブする場合や高域特性のそれ程良くない装置において特定の周波数帯を持ち上げることで人の声などの明瞭度を上げようと意図していることが理解できます。したがって、このような意図的な周波数特性のイコライジングが、本来私たちが目指すハイフィデリティー再生の考え方とは少し違った方向だということも認識した上で装置全体の回路構築を進めなければならないと思います。


FINAL POWER AMPLIFIER


 4D32pp POWER AMPLIFIER  WE 201 TYPE INTERSTAGE

本アンプは新しく製作し直した6AB7-6AG7-INT(WE201 CORE)-4D32pp-5Kpp:0-8-16Ω/50W Output Trans の3段構成で+B供給用電源には371Bと705Aをパラレル接続にしています。4D32というパワー管の凄いところは、一般的な「図体の大きな球は大雑把な音がする」という定説をいとも簡単に覆してくれるだけのF特の広さと繊細さ、緻密さ、圧倒的なエネルギー感など、音楽再生に必要な増幅管としての全てを備えているかのような気にさせてくれるところです。もちろん前段を構成している2本のメタル管も並みの電圧増幅管ではありません。私の装置ではWE系ST型電圧増幅管のように図体がデカい割には内部抵抗が高くプレート電流が僅か1~3mA程度しか流せないようなひ弱な球などはなから選択肢に有りませんが、比較的マトモな音のするKEN-RAD 6C5や6SN7でさえ明らかに寝ぼけて聴こえてしまうくらい本機に使用しているKEN-RAD6AB7や6AG7の3結はパワフルでシャープな名刀の切れ味のような音がします。要約すれば物理振動が少なく直線性に優れた単5極管を3結で使用することで、並みの3極管や盛大な物理振動で音を濁してしまうWE系電圧増幅管とは桁違いの広帯域特性と重心の低い安定感を兼ね備えた強靭な前段増幅回路を構成することが出来るということです。


4D32 HIGH GRADE TUBE SOCKET
真空管用プレートキャップは一旦取り付けるとあまり外すこともないのでそのまま使い続けるのが一般的なのですが、お客様の装置で使用していたアメリカ製スナップロック式モールドタイプのものが熱により固着してしまい外れないというアクシデントが起きたため、JAMES MILLENやNATIONAL RADIO製のセラミックタイプに交換したことが有りました。交換後の音の違いに驚き、それなら真空管の物理振動をもろに受けるソケットも当然ながら影響が有るはずだという思いで早速4D32用ソケットの交換にチャレンジすることに〜というわけで数年前に海外で見つけた秘蔵のMIL SPEC TUBE SOCKETを倉庫から引っ張り出し現用の4D32パワーアンプに搭載してみることにしました。改めてこのSOCKETを見てみると今まで使用していたJOHNSON 122-101-200とは桁違いの質感で、まさにMIL SPECとはこういうものを指すのだろうと納得させられる仕上がり具合です。ジョンソン製の3倍はあろうかという如何にも頑丈そうな銀メッキ端子は緩みなど有り得ないと言わんばかりの二重リベット止めです。各端子の絶縁には厚手のマイカノールが使用され、G1,G2端子にはセラミック台が使われているという徹底ぶりです。未使用品のデットストック品ではあるがアッセンブリー時に各端子を小容量のチタコンらしきものでアースしているところをみると、設計段階からオーディオグレード等とは桁違いのクオリティーが求められるマイクロ波などの特殊用途として製造されたたものだろうと想像出来ます。先ずはこれらの不要なCRなどのを取り外し、銀メッキ端子をクリーニングしてから換装作業の開始となりました。アンプ本体のソケット周りの配線が邪魔をして少々手こずったことも有り意外に時間がかかってしまったが、何とか夕方までには作業を終わらせることが出来たので早速試聴開始と相成りました。分解能やプレゼンス感が一段と良くなったことでグッと大人しい音になり「まさに大人の音」?というイメージがぴったりです。高品質MIL SPEC SOCKETと4D32を上部からガッチリと固定し不要な振動を起こさないためのTUBE RETAINERとの併用によって得られる劇的な音の変化は、忘れもしないリプラスGR-SSの「穏やかで有りながら分解能が良くプレゼンス感たっぷりの音」と同傾向の〜いやもしかしたらそれ以上の効果かもしれないと思わせるだけの驚きを与えてくれました。

本ソケットご希望の方はご相談下さい


SPEAKER SYSTEM



1200×1500サイズのメイプル集成材をシェラック仕上げにした平面バッフルです。平面バッフルではスピーカーを設置しただけで十分良い音がするなどということは間違っても有りませんから、必ず何らかの方法でルームチューニングが必要になります。ルームチューニングのポイントはライブな環境のオーディオルームの定在波を上手く処理することだと勝手に思っています。低域の出過ぎや全体的に音がボケるなどの原因は定在波を上手く処理することで殆ど解決します。低域の抜けの悪さをアンプのせいにする前にルームチューニングをやることが大切です。しかし、そうはいっても単純に定在波を吸収して減らすのではダメで、如何にピークを作らずに拡散させるかがポイントになります。吸音効果の高い材料で定在波を吸収しバランスを取るルームチューニング材では一聴して効果が上がったかのように感じることが有っても、落ち着いて試聴を重ねれば明らかに情報量が少なくなっていることに気づくはずです。さて、平面バッフルを設置する際どのように支持するかは問題の多いところでもありますが、基本的には響きを止めずにがっちり固定することですが、これが意外に難しいのです。中にはバッフルの不安定さを解消するために左右の端に足を付けて設置している方がいますが、それではせっかくバッフルの端まで響いた振動を止めてしまうことになります。私の設置方法はバッフルが左右に倒れない程度まで出来る限り中央寄りに足を取り付け、バッフルの一番上側から斜め後方に角材を振り下ろして先ほどの足の最後部と連結しています。ここはバッフル全体の振動エネルギーを受止めるところなのでより硬質な桜材などを使いました。また、後方側の連結部は左右に開くようにし、振り下ろした角材は必ず足の内側に固定します。ここを足の外側で連結すると音が濁り易くなります。なお、ローエンドまでクリアな低域を出す目的で後方に延びた足の上にやや厚め(15mm)のファブリックボードを設置しました。そして先ほど敷いた板と足の間やバッフル裏側の桟にはリプラス製水晶インシュレーターを挟み、足そのものも床に直置きせずに100HG-SS HRを前方に100HG-FLAT-SS HRを後方の端に設置しています(最近前方にGR-SSを後方に100HG-SS HRを装着しました)。そして床と水晶の間にはファブリックボードを敷いて床材の吸音を出来るだけ防ぐようにしています。こうすることで、低域が出にくく高域が粗いなどと酷評されることの多いKL439から軽くて歯切れの良い低域と澄んだ高域がバランス良く再現されるようになりました。しかしながら、これもハイスピードで余裕たっぷりの電源を持つ4D32ppパワーアンプや4D22ppプリアンプ、WE純鉄コアトランス等の相乗効果が有ってのことだろうと思います。4D32 TUBE SOCKETを高品質のものに交換してから音が激変したことについては他の項目でも述べたが、その結果オイロダインが思いもよらない程静かに鳴るようになったので、以前からいつかはやってみようと思っていたバッフル裏の桟を固定している木ネジの殆どを抜いてみました(この桟はバッフル面に木材用接着剤と木ネジを併用して固定しているので木ネジを外しても桟はびくともしないのです)。音楽を再生しながら作業を進めて行ったのだが、面白いことに木ネジを外せば外すほど一層響きが良くなり低域のエネルギー感も素晴らしく良くなってきた。4D32用真空管ソケットの換装以降、音楽を聴くのが楽しくてしょうがないという数日だったが、ここに来てまだまだやらなければならないことが結構有りそうだという気がして来たのは困ったものだ。しかし、流石にウーハー周りの50mm角ほどの補強材のネジを外すと少々低域が出過ぎるきらいが感じられてきたのでギリギリのところで止めにした。ありとあらゆる側面からこの難物KLL439スピーカーを鳴らすべくチャレンジをし続けて来たここ数年だが、ここに来て微かにではあるが目標としてきた到達点が見えてきたかのような気にさせてくれるのは、当然ながら他の改善部分との相乗効果が有っての事だと思います。


SPEAKER NETWORK
オイロダインオリジナルネットワークは最初から自分なりのものを製作し導入することが前提にありました。オリジナルネットワークのインピーダンスは12Ωですが、KL406単体でのインピーダンスが7.5ΩでKL302が12Ωということでインピーダンスマッチングのためにウーハー側にマッチングトランスを使用して12Ω:7.5Ωとしています。しかしながら、このトランスがクセモノで音を悪くしている要因にもなっています(その他のLCR類も大したものではありません)。それならばということで、KL406を8ΩとみなしKL302の高域減衰用抵抗とボイスコイルインピーダンスを合成抵抗としてー7db減衰時のCとRを算出し、単純な6db/oct -3db クロスとしました。LにはWE針金コアとWEリングコアから外した黒エナメルワイヤー7本撚りを使用し、Cには積層セラミックをシリーズ接続にして規定容量にし、RにはSPRAGUE BLUEJACKET巻線抵抗をパラレルで使用しました。各端子はアメリカ製セラミック型で配線材には現用のSPケーブルと同様の2A INDUCTORリッツワイヤーをシルクテープで絶縁しシェラック含浸して使用しています。なお、ネットワークユニットの組み立て台には例によってアメリカNASA製ファブリックボードの1/2 INCH 厚のものを使用しています。


SPEAKER CABLE

私の場合はWE製リッツワイヤーをダブルで使用し極薄100%シルクテープをテンションをかけながら巻いたケーブルをバイワイヤー結線にしています。最近、シルクカバーの上から音質的にも優れているといわれる
シードラック溶液を浸透させ十分乾燥させた後に改めて試聴してみました。全体的な音質的傾向が変わるわけではありませんが、より一層誇張感のない自然な柔らかさと見通しの良さが加わった感じです。WE機器に夢中になっていた20〜30代の頃はWE555+WE596Aや594Aなどを使っていたせいも有り20AWG単線シルク&エナメルワイヤー辺りを使ってその気になっていた時期も有りましたが、当時使用していた205Dppや300Bpp、212A/DなどのWE系直熱管アンプがそこまでの違いを引き出すほどのF特の広さや解像力を持っていなかったという事を実感したのは随分後になってのことでした。要するに接続ケーブルを云々する前に機器のクオリティーを十分に高めておかなければ間違ったケーブル選びをしていることに気づかないまま通り過ぎてしまうことにもなり兼ねないということだと思います。

WE 2A INDUCTOR LITZ WIREを使用したSPケーブル



ISOLATION TRANS & POWER OUTLET

   WT ISOLATION TRANS    SBT-4SZ HG-MK2SR

200V-100VアイソレーショントランスにはWESTERN INC製とアメリカ製トロイダル型アイソレーショントランス(1500VA)を使用しています。各アンプのヒーター回路やEMT-930のモーター駆動用には単独使用のトロイダル型から供給し、その他の高圧整流ユニットへの供給にはWESTERN INC製を使用しています。Audio Replas SBT-4SZ/HG-MK2SR(画像右)へはJODELICA ETP-930RHを通じて供給し, OUTLET BOX から各機器への供給用ACプラグにはAudio Replas RCP-1RUを使用しています。画像左のWESTERN INC製アイソレーション電源は最大115V-44.5A(5KW)の出力を取り出せるものです。さすがにこの巨大さですから多少のうなりも有りますが、音質的には中々の性能を持っていると思います。なお、本体右側の塩化ビニール系のアウトレットコンセントは使用せずに、トランス本体の端子から直接SBT-4SZ/HG-MK2SRに接続しています。また、SBT-4SZの空きコンセント部分にはFURURECH NCF Clear Lineをダブルで使用しています。


FULL-WAVE RECTIFIER HT DC SUPPLY

 6.3V-8.7A×2 HT SUPPLY UNIT

以前からプリアンプのヒーター点火について色々と実験しては来たのですが、今回、両波整流型DC点火をテストしてみることにしました。元々、当店のプリアンプやパワーアンプは増幅部本体と電源部本体、HV電源の3台のシャーシもしくはHT電源を独立させた4台で構成されていますので、一般的なアンプからすればスペースファクターの悪さは特筆もんで、その上新たに巨大LR独立HT電源なるものを加えるというのは流石にちょっとやり過ぎだろうと思っていたのですが、しかし、今回変更するアンプは6BX7pp構成のプリアンプですのでL/R共通回路で良いのでまだマシかというところで早速完成した電源ユニットをお客様のお宅に持ち込み試聴してみました。なんと傍熱管プリアンプのヒーターDC点火回路を変更しただけで装置が別物になってしまった〜いやいやそれはちょっと言い過ぎですが、そのくらいの表現をしたくなるほどの劇的な音質改善効果は想定外でした。また、つい先日は4D32ppタイプのプリアンプをご愛用頂いているお客様からのご依頼により製作したLR独立型DC点火ユニットを接続し試聴させて頂きましたが、同様のもしくはそれ以上の効果を実感することが出来ました。WEダイオードと整流回路の変更だけでこれだけの音質改善効果が有るのなら、古くからフィールドスピーカー用励磁電源や光電管エキサイター、バッテリーチャージャーなどに使われたタンガーバルによる両波整流も試してみる必要が有るのではないか?という誘惑にもかられますが、6.3V-8ADC以上にもなる電源2系統をタンガーバルブを使って点火するとなると、今でさえも発熱との戦いになってしまった感のある我オーディオ装置にこれ以上世の省エネムードに逆行するような悪行?は厳に慎まなければ〜と我に返ったところで、それなら熱エネルギーによって電子の移動を促す必要のないセレニウム素子による整流ならどうだろうか。こちらは4D32ppパワーアンプ用なので手っ取り早くシングルチョークで実験。音質は何も言うことが無いといえるほど素晴らしいものになりました。例えれば、今まで使用していたWEダイオードの両波整流が高級デジタル一眼レフの細部までクッキリと見渡せる超リアリティーな表現だとすれば、今回のセレニウム整流は細部まで見渡せる繊細さとリアリティーはそれ程大きくは変わらないが、もう少し自然なボケ味のアナログ中判カメラのような穏やかで優しさを感じさせる音、敢えていうなら、より一層コンサート会場の音に近づいたような気分にさせてくれる音という感じがします。今更感この上ない気がしますが、セレニウム両波整流チョークインプット回路の採用とフィルター回路のオール積層セラミックコン化など
、長年見過ごして来てしまった感のある真空管ヒーターDC点火回路の未知なる世界を改めて実体験出来たことは大変貴重な経験でした。


HV(+B) POWER SUPPLY


371B×4, 705A×6 RECTIFIER UNIT

一般的な真空管式オーディオアンプでは両波整流管1本で電源供給をしているものがほとんどですが、当店で製作するアンプでは必ずといっていいほど複数の整流管を使用しています。以前の記述内容と重複する部分も有るかもしれませんが改めてB電圧電源について述べてみたいと思います。
個人的にも20〜30代頃まではWE274A/Bや280(ナス管)が最も良い音のする整流管と思い使い続けていた時期も有りました。その後WE 46アンプなどを使い始めると直熱3極管205Dを2極巻接続にして半波整流管として使っているのに驚き、何故このような使い方をしているのか?と思いきや何のことは無いパワー管と同じ球を整流管に使えば緊急時に互換性のある球の方が有利だという簡単な理由でした。整流管製造(特にフィラメント)の難しさもさることながら、比較的内部抵抗の高い205Dなどの直熱3極管を整流管として使用すれば当然ながら音も良いということで一石二鳥とはこのことだと納得しました。その後に開発された274A/Bや280などもオキサイド型両波整流管の中では比較的内部抵抗の高い整流管ということでそれなりに素性の良い整流管といえます。ヨーロッパ系整流管については、使われている材料が良くないせいか相対的に音が粗い傾向が有りますが、その音の粗さを「枯れた音」と捉えて評価する方もおられるので頭ごなしに否定することはしません。いずれにしても、古典的なオキサイド型整流管1本でオーディオ再生用高圧電源としての役目を十分果たしているとは思えません。増幅回路の質的向上を目指すプロセスで必ず電源回路の不備がネックになることを多くのベテランオーディオ愛好家が痛感するであろうと思いますが、願わくばタイミングを失することなく電源の重要性を再認識して頂くことを願っています。さて、一般論はこのくらいにして本題に入りましょう。当時の受信管(ラジオや家庭用電蓄など)としての使用ではオキサイド型両波整流管1本で十分な性能を維持できたということのようですが、はたして強大なダイナミックレンジを有する現代のHi-Fi オーディオ装置にもそのままの形で採用するだけで十分なのだろうか。例えばひとつの例として、通常の管球式オーディオ装置で音量を上げていくと分解能が落ちて刺激的な音になってしまう症状は電源の供給スピードが間に合っていない状態なのではないか。この現象はパワー管が金魚鉢の金魚のように酸欠状態になっているのに似ていると考えられます。逆に満ち足りた電源によって構成されたアンプでは、それ程音質的評価の高くない真空管でも意外に充実したサウンドが得られることが多いのです。当店が好んで使用するトリタンフィラメントを持つ高真空型半波整流管は、高温で熱せられた熱電子がハイスピードで増幅管にエネルギーを供給できるため金魚のような酸欠状態にはなりません。したがって、
比較的広いリスニングルームでコンサートホール並みの音量で音楽を鑑賞しても低域が膨らみすぎることや刺激的な高域になることも殆どありません。
要するに音量の大小によって周波数レスポンスや分解能がほとんど影響を受けないという安定感の有る再生音は電源の質に依存しているということなのです。このことはクラシック音楽などの変化に富んだ演奏を再生する上では大変重要なファクターのひとつと思います。ご自身のリスニングルームがちょっとしたコンサートホールに早変わりしたかのような気分で音楽を楽しみたいと願う熱烈な音楽愛好家の皆さんには是非ともトリタン整流管複数使用の素晴らしさを実感して頂きたいものです。

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