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Vintage Audio Service.

 VINTAGE AUDIO PROJECT

このページでは私のオーディオ装置の構築プロセスや音質改善のための新たな追求&実験などを通して、同好の皆さんとの交流の場として継続して行きたいと考えています。

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TURNTABLE

      
EMT-930           MOTOR CONTROL UNIT
EMT-930を選んだ理由について、バロック系クラシック音楽を再生することの多い私としては何としても光悦スペシャルバージョンカートリッジを上手く鳴らしたいという思いから、必然的にトレース能力の高いダイナミックバランス型トーンアームが不可欠ということで、唯一無二のダイナベクターDV507MKUしかないと結論付け、このアームが使える精度の高いモーターはといえばEMT-930しか無いだろうということになった(残念ながらロングアーム仕様の927ではこのアームが使えない)。ただし、このモーターを使うにあたって進相コンデンサー&サープレッサー抵抗の交換と220V外部供給用アイソレーショントランスの導入が不可欠だ。その進相コンデンサーユニットは当初3mm厚程のNASA Fabric BoardにHH.Smith Terminal Stripを使用し、Bluejacket Resistorと積層セラミック+EM Silver Micaで構成したものを使っていたのだが、1ヵ月ほど前3mm厚の真鍮板にTektronix Ceramic Terminal StripとWE Ceramic Terminal Postを取り付けたものに変更してみた。CR類はそのまま移行しオーディオリプラス製スモールサイズインシュレーターを使って設置しただけという単純に物理振動効果を狙った実験でしたが、結果的には信じがたいほどの音質改善となりました



    WE 18A FUSE BLOCK     WE KS14169 FUSE BLOCK
2023/12/01:
数日前、私と同じオイロダインを愛用する友人からEMT-927のヒューズを小容量のものに替えたら音が良くなったという情報を得て、早速930の220VACラインに使用しているヒューズを見直してみることにした。今までは規定値通りの1/2A(200V~仕様時)を使っていたのだが、私の930ではモーター意外に電力の供給先が無いので1/4Aで事足りるはずだと踏んで1/10Aや18/100Aを単独または2本パラレルで使用してみた。やはり小容量のものをパラレルで使用した方がより一層誇張感のない自然な音になって来る。このヒューズの音を知ってしまうと一般的な真空管式アンプ等に多用されるLITTELやBUSSMANなどのスローブローヒューズは音が鈍くて使えない。本来ヒューズなど無いに越したことはないのだが安全性を考えると使わざるを得ない。それならば極力音に影響の少ないものを見つけるしかない〜ということで白羽の矢が立ったのがWEが電話回線や測定器用に開発した即断型 70 SERIES FUSEという訳だ。溶断を可視化した速断ヒューズが1930〜40年代頃から存在していたとは今更ながら驚く。しかしながら、このヒューズを使うには溶断すると容量によって色分けされている部分が飛び出すタイプの専用ヒューズホルダーが必要になる。



TURNTABLE SHEET & RECORD STABILIZER

  TS-OPT300HR & OPS-1HR
ゴム系ターンテーブルシートは単なる滑り止めの効果以外に何も期待出来るものは有りませんが、吸音性の高い革やフェルト、付帯音の多い多結晶硬質ガラスなども先ず以って好結果は得られません。敢えていうならば、最も物理振動の影響を受けやすい記録媒体であるアナログレコードの材質に対して何の対策もせずに録音の良し悪しやレーベルによる音の違いを云々するのは如何にも片手落ちではないかと思います。信号の入り口で汚染された音楽信号は徐々に増幅され更なる付帯音と共にスピーカーを通して空間へと放たれるということを考えれば、その後のルームチューニングなどにも多大な悪影響を与えることは推して知るべしではないか。要するに、情報量を減らさずに且つ余計な変調のかからない最も優れた素材ということを第一に考えるならばオーディオリプラス製水晶シート以外に選択肢などないのではないかと思います。また、アナログレコード再生に必ず必要なセンタースピンドルで使用するレコードスタビライザーも水晶製が不可欠で、如何に着色の少ない信号をMCトランスやプリアンプに伝送するかという目的を達成するためにはターンテーブルシート同様極めて重要です。
高周波領域で使用する水晶振動子に着目した人工水晶製スタビライザーやインシュレーター、ターンテーブルシートなどは物理振動を可聴帯よりも高い共振周波数で拡散させることでオーディオ帯域に影響を与えずに効果的に振動を処理する方法として、これ以上有効な方法は先ず以って存在しないのではないかと思います。十数年前からオーディオリプラス製品の音質改善効果を実感してきた私としてはAudio Replas社の真骨頂ともいえる水晶製ターンテーブルシートやスタビライザーの導入が必ずやHi-Fiアナログ再生への最短距離であると確信しています。



TONEARM

    DV-507MK2
このトーンアームほどトレース能力の高いものを知りません。20代の頃から同メーカー製DV-505を使っていたせいも有るのかもしれませんが、スタティックバランス型アームの安定感のない音が嫌いな私としては現行のDV-507mk2以外の選択肢は有りませんでした。当時世間ではFR64Sや66Sがもてはやされていた時期でも有りましたが、ステンレスという合金特有の振動伝達スピードの鈍さと重針圧用という感度の鈍さがクラシック音楽を聴く機会の多い私の目には留まりませんでした。また、軽針圧用としてアルミ製の64FX等も有りましたが質量分離型アームのトレース能力に太刀打ちできるほどのものではないという理由で除外しました。ビンテージオーディオ愛好家の世界では比較的ロングアームが珍重されるような風潮が有ります。インサイドフォース対策や振動発生源から支点までの距離が長いことによる物理振動的優位性は理解できますが、感度の悪さに起因するトレース能力の低さなどを考えるとそれ程のメリットが有るわけでもないことが分かります。要約すれば、トレース能力が高く間接音の表現力に優れたしなやかさを持つボロンカンチレバーとプラチナマグネット&WEオールドマグネットワイヤー+ヒスイ&メノウボディというカートリッジ界のF1 CAR的存在のハイスペック光悦カートリッジの能力を最大限に引き出すための条件を満たすものとしてダイナベクターDV507MKUを選択するに至ったということなのです。



MC CARTRIDGE

     KOETSU(ヒスイ)        KOETSU(メノウ)
ダイナベクター507MKUの高感度アームで最高の性能を発揮出来るカートリッジといえば光悦カートリッジ以外には存在しないのではないかと思います。画像左は初代光悦さんが長年温存していた原石から切り出した気泡の全く無いヒスイケースで、右側は結晶化する際に鉄分が多く浸透した為に茶褐色化し一層高硬度に形成されたメノウケースです。どちらもしなやかで間接音の再現に長けたトレース能力の高いボロンカンチレバー+プラチナマグネット+WE OLD WIRE 仕様というスペシャルバージョンハイスペックカートリッジです。しかしながら、あまりの高分解能ゆえ、少し古い録音のオーケストラや管弦楽などを再生した際、音楽の一体感のようなものが再現されにくいと感じることが有ります。言い換えれば少しコンプライアンスの低い旧態依然としたカートリッジの方が50〜60年代前半頃のモノラル→ステレオ移行期あたりの録音をそつなく再生してくれるということなのかもしれません。とはいってもローコンプライアンスカートリッジではバロック系オーディオファイル盤などを再生した際もう少し分解能が高く間接音の表現力が上がらないものかというもどかしさが有るのも事実です。ある意味光悦製メノウ&ヒスイタイプのようなハイスペックカートリッジはアナログレコードの黄金期ともいえる60年代末期から80年代初頭頃のいわゆるオーディオファイル盤的高音質録音盤 PHILIPS 6769022 6769024 6769097 DG 2530559 2531329 あたりの再生に的を絞った方が良さそうな気もします。いずれにしても、小手先のごまかしなど一切受け入れてくれないオイロダインKLL439+平面バッフルという類い稀なるスピーカーシステムを使い続ける限り、繊細で残響の長いバロック系の再生において独壇場ともいえる程のリアリティーを発揮してくれるスペシャルバージョン光悦カートリッジをおいそれと否定するわけにはいかないのです。ついでにカートリッジ関連パーツについてひとこと、長期間MCカートリッジを使い続けていると使用頻度にもよりますが3ヵ月に一度くらいは磁気抜きが必要になることはご存じの通りです。私の場合ORBのカートリッジエキサイターというものを使っていますが、これが中々便利なもので長い間使わずじまいになっていたカートリッジや室温の低い冬の時期などにビリつきを生じるようなカートリッジのダンパーの動きをスムーズにするのと同時に出力ピンをショートしておくことで、磁化してしまったムービングコイルの磁気抜きも一挙に出来てしまうという優れモノなのです。また、スライラスクリーナーは10年以上前からドクタースタイラスを使っていますが、チップとカンチレバーの接合部分に悪影響がなく洗浄効果の高いクリーナーとして今のところこれに勝るモノがないと思っています。



CARTRIDGE SHELL


    RHS-1HR + RCS-25-SS
カートリッジ用シェルもカートリッジボディの一部という考え方で良いと思いますが、物理振動の共振点が可聴帯内に有るような素材ではその共振周波数によって確実に影響を受けますので、私の装置ではオーディオリプラス製RHS-1HRを使っています。また、ターンテーブル面とダイナベクターアームの高さ調整範囲の関係で、カートリッジとシェルの間にオーディオリプラス製カートリッジスペーサーRHS-25-SSを使用しています。以前は初期型RSC-25HRを使っていましたが、少し取付ネジを締め過ぎたせいでクラックが入ってしまったのをきっかけに新製品の25-SSにしてみました。こんな小さなものでも微小信号部分だけあって相当威力があるものだと改めて実感させられました。シェルとアームの接続部分には、一般的にゴム系のリングを使用しているのが普通ですが私の装置ではジックスリングを使っています。音質的には劇的といっていいくらいの変わりようですから皆さんも一度使ってみて下さい。シェルリードも市販のもので良ければ苦労しないで済むのですが、絶縁素材に熱収縮などの化学材料を使用したワイヤーでは付帯音が多くくすんだ傾向の音になりがちです。ということでここでもWEオールドリッツワイヤーの登場となりますが、ここではWE 77A RET から外した少し細めのリッツワイヤーにシェラック含浸したものを使っています。




AUDIO RACK



現用のオーディオラックは中空角型鉄パイプを溶接したものです。設置用の棚板には15mm厚のファブリックボードを使っています。意外にも金属ケースに入った機器の設置に水晶などを使用した場合、設置側の材料によっては思った程の効果が得られないことが有ります。例えば機器側から金属シャーシ底板→水晶インシュレーター→木製ラックよりも金属シャーシ→水晶インシュレーター→ファブリックボードの方が濁りの少ない音になります。以前は何も考えずにメイプル集成材にシェラック仕上げをした木製ラックを使用していましたが、リプラス製ピンポイント+水晶インシュレーター+ファブリックボード+角型中空パイプ式オーディオラックの音の良さを知ってからは全く迷いがなくなりました。




CONNECTION CABLE


アームケーブルからスピーカーケーブルまで数多くのケーブルで接続しなければならないオーディオ装置ではケーブルの材質や構造がとても重要になって来ます。WE系のシルク&エナメル絶縁単線やWEリングコアから外した細めのシルクエナメル単線を奇数本束ねたものなどを長年使ってきましたが、装置のグレードが上がるにつれて分解能の高いリッツ構造のケーブルに移行して来ました。ここまで装置の追い込みが進んで来ると、各機器間の接続ケーブルの長さや絶縁材料等によって音がコロコロ変化する。私の場合はフォノケーブルの長さとMCトランスからプリアンプまでの長さを各1.2m/0.6mに固定し、他の機器間のケーブルの長さを試聴しながら決めました。結果としてはどのケーブルでも長過ぎてはダメで各接続ケーブルの長さが0.5〜1.2m位で収まるような位置に各機器を設置し、部屋の広さに応じてSPケーブルの長さを調整するという方法が最も合理的ではないかと思います。左画像は0.1mm DIA程のエナメル被覆銅線30本束を絹巻にし含浸したリッツ線を使用して製作した接続ケーブルです。このケーブルはどこに使っても分解能がアップし誇張感の無い自然な音の傾向になりますが、今回はSELENIUM HT電源からアンプへのDC供給用ケーブル(プリ側 1.2m、パワーアンプ側 0.8m)に3本スタックにして使ってみました。AC電源ケーブルとしても相当効果が有りますがこちらのDC供給でも威力を発揮してくれました。




CONNECTION PLUG & RECEPTACLE

長い間CARDASやSWITCHCRAFTなどの一般的なRCA型接続コネクターを使用してきたが、電話交換機や測定器用などにWEが開発したこのコネクターを導入してからはこれ一辺倒になってしまった。ストロークが長くセンターピンを包み込むアース側の構造も素晴らしい。



INSULATOR


   
 プリアンプ(GR-SS)       スピーカーバッフル(GR-SS)      パワーアンプ(GR-SS)
使用しているインシュレーターは全てオーディオリプラス製です。狙っている音の方向性が同じということを前提とするなら、物理振動をコントロールするためのアクセサリーやルームチューニング材の選定は基本的に同一メーカーのものを使用することの方が理にかなっていると思います。私の装置ではカートリッジ用シェルやカートリッジスペーサーから始まって、アームベース周りやモーター支持フレーム、ターンテーブルシートにレコードスタビライザー、930プレーヤーの足、進相コンデンサーユニットの台、角型中空アングルラックの足と各棚板の接地面、信号系の全ての機器の設置にオーディオリプラス製水晶インシュレーターを使用しています。ちなみに、最近導入したGR-SSタイプを最も効果的であろうと思われる4D22ppプリアンプ本体の設置にスパイクインシュレーターとの組み合わせで使用してみたところ劇的といって良いほどの音質改善効果が有りました。このGR-SSをMCトランスのピンポイント設置に変更すればまたまた激変するのではないかという兆候は100HG-SS-HRでの試聴でも十分感じることが出来ました。さて時は過ぎ、スピーカーボックスの支持に使用しているAudio Replas 100HG-SS-HRをGR-SSに交換し劇的なまでの音質改善を達成されたお客様の装置を聴かせて頂く機会に恵まれたのですが、その音の素晴らしさに唖然とし早速GR-SSを注文してしまったのです。私のオイロダインは平面バッフル型なので前方支持の二か所にGR-SSを、後方二か所には従来から前方支持に使用していた100HG-SS-HRを移動すればことが足りるので懐具合と相談して何とか4個組1セットで済ませることが出来ました。一人では不可能と思われた交換作業も思いの他スムーズに終わったので早速変化の度合いを検証してみることにしました。ARCHIV盤の中でも特に鳴らしにくいといわれている25334212533425では確かに高域の分解能がより一層良くなり中低域も幾分穏やかな鳴り方に変わってきたものの激変とまでは行かないようです。やはり「暫くエージングが必要」との先人諸氏の経験談が如何に的を得たアドバイスであったかを改めて実感することとなりました。その後の変容ぶりはアンプなどのパーツや回路をどう変更しようとも到達し得ないであろう飛躍的な分解能のアップと誇張感のない穏やかな再生音は当初の期待を大幅に上回る結果となり、超難盤と目されるH.MUNDI 1C165-99972/3やHYPERION SALOMON SQ TELEFUNKEN SWAT9518A STIL 2107s75なども穏やかで自然な音になって来た。また、先日は日頃から親しくして頂いているお客様から「例のHT電源もオーディオリプラス製水晶インシュレーターを使って設置したらとても良かった」との情報を頂き早速私もやってみました。30mm DIA×20mmのリプラス製インシュレーターを今まで使っていたプリとパワーのインターステージトランスの上から外し、2台のセレニウム電源シャーシの設置に使用しただけの簡単なテストです。今までは床側に15mm厚のファブリックボードを使っているせいも有り、まぁ〜ゴム足じゃ話にならんが同じファブリック製30mm DIA×15mmの足ならそれ程引けを取らないだろうなどと高を括っていたが、いざ交換してみると重心が低く落ち着いた印象になった。これはまずいぞ!何故ヒーターDC 点火電源ごときに何を施しても音が変化するのか〜それならと底板を3mm厚の真鍮板にし、30mm×20mmの水晶インシュレーターとリプラス製ピンポイントを使って設置してみたが、これまた劇的ともいえるほどの音質改善が出来た気がする。



NOISE SUPPRESSOR


電源ノイズや微小信号回路への電磁誘導ノイズなどありとあらゆるノイズがHi-Fiオーディオ再生に悪影響を与えます。私の場合はEMT 930へのAC供給ライン、PREAMP & POWER AMPへのDC供給ライン、その他にPHONO CABLE、SPEAKER CABLEなど合計7ヶ所にオーディオリプラス製CNS-7000SZノイズスタビライザーを使用していますが、どの接続ケーブルに使用しても音の粗さが無くなり穏やかな傾向の音になります。しかし周波数レスポンスがそれ程良いとはいえない装置や少々高域が暴れ気味な装置では本製品の導入によって「音に覇気が無くなった」などの誤った印象を持たれる方もおりますので、先ずは装置全体のグレードを上げることが先決ではないかと思います。この手の音質改善アイテムやルームチューニング材などの適切な使用は間違いなく大人しい傾向の音に変化しますから、その上で音楽のリアリティーが失われないような方向にまとめ上げるのが、装置構築の正攻法といえるのではないかと思います。



MC STEPUP TRANS


現用のMCカートリッジ用昇圧トランスはWE純鉄リングコアやWE201型コアを使用してリメイクしたものです。入出力端子はWE製を使用し設置用インシューレーターにはAudio Replas OPT-100HG-SS/HR+RSI-M6を使用しています。WE555Wや594Aスピーカーを使用していた20~40代の頃はWE261Bや208PなどにSPUやTYPE-C、FIRCHILD 225A等を組み合わせてジャズやロックなどを楽しんでいましたが、KLL439スピーカーの導入と共にWE純鉄リングコアを使ったMCトランスを使うようになり、ようやくクラシック音楽が聴けるようになったという気がしました。画像右はWE201型トランスをリメイクしたもので、より誇張感のない自然な音楽表現が特徴です。仕事がら比較的多くのMCカートリッジ用昇圧トランスなるものを聴く機会に恵まれましたが、古典的なローコンプライアンス型カートリッジ+パーマロイコア型MC昇圧トランスあたりで情緒的に音楽を鳴らすならそれなりに雰囲気も有りあれやこれやと音の違いを楽しむことも出来るでしょうが、クラシックレコードのオーディオファイル盤あたりを再生した際に音の良いコンサートホールの上席にでも身を置いているかのような気分にさせてくれる程のクオリティーを求めるなら、WE系マイクトランスやライントランスなどの流用や親指の先ほどの小型パーマロイコア型MCトランス辺りでは役不足感が否めないのではないかと思います。
2024.02.21:WEトランスについて、WE製コアそのものは材料としてみればとても質の高い(純度が高いという意味ではありません)ものだと思いますが、こと出来上がったトランスとなると30年代後半ごろまでの低透磁率純鉄コア型トランスでは昇圧比を稼ぐため(当時の真空管の増幅度の低さと不良率の高さを考慮するとトランスでゲインを稼ぐ事の方が理にかなっていた?)の策として巻き数を目いっぱい多くした結果が巻線間の浮遊容量や鉄損&巻線抵抗の増大によりナローレンジでとても現代の音楽鑑賞用には適さない(当時は殆ど通信用目的なので帯域幅は300~3Kも有れば十分だったが)。また、それ以降のパーマロイコア型トランスになると一転高透磁率コアゆえに巻き数も少なくて済みF特も広くなった代わりに、磁気ヒステリシスの影響を受けやすく減衰特性の良くない高透磁率コアの性質が影響し、歯切れの悪いベールのかかった再生音になり易いという結果になってしまったのです(現存するMCトランスの殆どがこの部類に入ると思われます)。私たちが求めるHi-Fi再生用MCカートリッジステップアップトランスというアナログレコード再生の根幹を成す重要な昇圧トランスにこれぞというものが無いに等しいという状況を踏まえれば、可能な限り質の良い(ここでは比較的ブロードな磁気特性を有する純鉄コアを指します)コアを使い、そのカートリッジのインピーダンスに適合するトランスを製作するしかないということになるのではないかと思います。
2024.03.06:
MCトランスのハム対策についてですが、ビンテージオーディオ再生装置の中でもっとも外来ノイズや周辺機器から発生する漏洩フラックスの影響を受け易いトランスはMCカートリッジ用昇圧トランスということになりますが、一流メーカーかどうかの根拠はさて置き販売網の確立と宣伝効果などによってそれなりの評価を得ているトランスではどのような状況下で使用してもそれ程大きなノイズなどの問題が発生しないように多重シールドを施して製品化されています。
それ程でもない音の理由のひとつにこの過剰ともいえるほどのシールドが原因になっているとも考えられます。もちろんそれ以前にコアの材質も含めて透磁率の高いパーマロイ系コア(立ち上がりは早いが減衰カーブが非常に悪い)に髪の毛よりも細いマグネットワイヤーを巻き、ガチガチにシールドを施せば音質劣化が著しいことは当然といえば当然です。もっとも、それらのことなどメーカーサイドとしては百も承知の上で製作しているはずですが、営利目的でそつのないものを製作販売するというメーカーとしての目論見も理解できないわけではありません。しかしながら、これらの一流メーカー製トランスが私達多くの音楽ファンが望んでいるであろう「コンサートホール並みの音で音楽を楽しみたい」という欲求にどれだけ応えられているのだろうかという疑問を抱かれる方も少なくないのではないかと思います。流石に旧態依然とした透磁率の低い大型コアを使用すれば外来ノイズや誘導ノイズに弱いであろうことは容易に理解出来ます。ましてや、オルトフォン用などの1.5~3Ωのローインピーダンスカートリッジ用ではSNの悪化が一層顕著になることは当然です。しかしながら、それでも何とか最小限度のSN対策をしてこの劇的に音楽性の豊かなMCトランスを使ってみたいという誘惑にかられ、超古典的なWE製純鉄リングコアや201型ギャップ無純鉄コアを使用したMCトランスの製作に踏み切ったという訳なのです。
このような理由を元にトランス内部には全く磁気シールドなどの対策を施していませんので可能な限り周囲からのノイズを拾わないような環境下で使用することが肝要です。その上で最小限度のシールド材をトランスの外側に取り付けることで実用可能なレベルまでSNを上げることが出来るはずです。
もっとも、周囲からノイズ発生源を可能な限り遠ざけることやノイズ発生源側の電磁ノイズを封じ込めるなどの対策をする事の方がより効果的な場合も有ります。特にネオン管や蛍光灯などの放電管(タンガーバルブや水銀整流管なども含まれます)を使用している機器からは盛大な放電ノイズが発生していますから、先ずはそれらの対策を先んじる必要が有ります。
私の装置ではMCトランスやプリアンプを設置している外壁のすぐそばにエアコンの室外機が設置して有り、これはまずいということで業者さんにお願いして3mほど離して再設置してもらったことが有りました(木造なので磁気シールドに対しては全く無防備な状態でした)。また、これらのインバーター機器などからのノイズ発生を考慮してアイソレーショントランンスや電源クリーナーを導入することも音質改善効果を含めて大変有効な手段の一つになると思います。



PREAMPLIFIER


WE 417A-WE 404A-6AB7-INT-4D22pp-6Kpp:600Ω/35W Output Trans の4段構成プリアンプです。比較的大がかりなプリアンプで高圧整流回路、高圧電源平滑回路、ヒーターDC点火回路は全て別シャーシにより構成されています。エネルギーレスポンスが良く実在感とプレゼンス感の有るハイファイプリアンプを実現する為には「ハイゲインで有りながら音楽的SN感に優れた付帯音の少ない前置アンプ」という到達点を目指すことにそれ程異論はないと思われますが、そこがプリアンプ製作のむずかしさでもあり面白さでも有ります。確かに微小信号部分を多く含む大規模なプリアンプの構築には、ある程度の経験値や臨機応変な対応力が必要となりますが、マランツやマッキントッシュなどの既製品やWestrexやWE系ラインアンプを改造したガレージメーカー製プリアンプなどにこれぞという程のものが先ず以って無いという現状を踏まえた上でのチャレンジですから、千里眼的部品選びなどの入念な計画性は当然のことながら、長期の継続的製作意欲が必要となることは致し方のないことかもしれません。それにしても、これほどのアナログブームが到来しているご時世にもかかわらず、オーディオ専門誌や技術雑誌などにこれぞと思う程の真空管式アナログ再生用プリアンプなるものの製作記事が全くといっていいほど掲載されないというのも不可解なことです。嘗てはビンテージオーディオ界の牽引役とまでいわれた日本のオーディオ誌に溢れんばかりの製作記事を投稿されていた諸先輩技術者の方々には今一度奮起して頂きたいものです。


MT 9-PIN TUBE SOCKET


プリアンプやパワーアンプの4D32ソケット(4D32 HG SOCKET参照)と共に以前からもう少しクオリティーの高いMT管用ソケットは無いものかと思いつつも、アメリカ製セラミック型EBY SOCKETで我慢してきたのだが、最近偶然にも抜群に作りの良さそうなソケットを見つけたので、早速4D32プリアンプの前段417A、404Aにでも使ってみようかと思い真鍮板を加工して取り付けてみました。取付穴サイズは一般的なMT9ピンソケットと全く同じですが、如何にも物理振動の影響を受けにくそうな硬質セラミックのサイズ感が何とも頼もしい感じがします。このソケットに取り付けるシールドカバーは一般的なものよりも確実に真空管をホールドするIERC製MS24232 TYPE(MIL SPEC)を使用しています。以前、WE機材などに多く付いていた緑色や茶色のモールド樹脂製MT9ピン用ソケットが出回ったことが有りましたが、接触が甘く緩くてグラグラする質の悪いソケットで閉口したことが有りました。それに比べ今回のBENDIX製セラミックソケットは接触部分のストロークの長さも十分で、抜き差しの際の感触も素晴らしく、一般的なMT管ソケットとは桁違いの品質であることが理解できます。追々プリアンプへの導入を進める予定ですが、初段管〜2段目という最もセンシティブな部分でもあることから劇的なまでの音質改善効果が得られるのはほぼ間違いないだろうと確信しています。このところやけに物理振動系に固執している感が有りますが、今回のMT TUBE SOCKETや半年ほど前に導入した4D32用特殊ソケット、セレニウム電源の積層コンデンサー設置用高純度アルミナプレート、EMT-927/930用進相コンデンサー設置方法の変更等々、物理振動対策としての追い込みが劇的変化をもたらしている現実を目の当たりにするにつけ、真空管や抵抗、コンデンサー、ソケットなどのパーツ選びに神経を使うのは当然のことながら、物理振動への着眼無しに高品位オーディオ再生装置の構築は成し得ないだろうという思いがより一層確実なものとなって来た感が有ります。



RIAA LCR EQUALIZER & ATTENUATOR


WE製純鉄リングコアを使用したRIAA EQUALIZERとDAVEN製ATTのロータリースイッチ部分を使用した600Ω型アッテネーターです。ATTはある意味必要悪のようなものですから極力音質劣化の少ない質の良いパーツを使い単純な回路構成で構築すべきだと思います。部品選びということでいえば、有名オーディオメーカーが使用しているとかWEアンプにも使っていたからなどというおおよそ根拠のないパーツ選びはいい加減止めにした方が遠回りせずに済むのではないかと思います。いくら高度な電気技術や回路技術を持ち合わせていても、音楽にそれ程興味のないガレージメーカーの技術屋さんあたりが然したる吟味もせずに選んだ真空管やトランス&パーツなどを並べた程度では、多くの音楽ファンが求めているであろうコンサートホール並みの実在感やプレゼンス感を再現したいという願いなど望むべくもないという結果になってしまうのではないか。未だに直熱3極管が最も優れた真空管だと勘違いしている音楽&オーディオファンが多い原因のひとつは、多極管アンプにマトモな音のするものがほとんど存在しないということが大きな理由になっているのではないかとも思う。それにしても、間接音の再現性に欠ける内部抵抗の低い直熱3極管の色付けの多い音には閉口するが、その音が好きだと言われればそれはそれで致し方のないことだと納得せざるを得ない。
さて、プリアンプ用前段真空管ソケットの交換ついでに600ΩATTの抵抗やLCR EQに使用している巻線抵抗やセラミックコン等のパーツも例の高純度アルミナプレートに取り付けたらどうだろうか〜という期待を込めて一挙にやってしまおうということになった。朝から600ΩATTとLCR EQユニットの取付ベースをアルミナプレートに変更すべく分解作業をを開始した〜昨日夜なべで接合しておいたセラミックターミナルポストに早速部品の取り付けと再配線を始めたのだが意外に苦戦してしまったため夕方5時頃にようやく配線終了。配線材が硬くて折れやすいリッツ線ということも有り結束はせずにそのままにした。とにかく早く音を聴いてみたいという願望にかられマトモに配線チェックもせずに装置の電源ON。ノイズレベルも改造前と変わらないので先ずは一安心。さて何を聴いてみようかと迷ったがいつものHi-Fi 録音盤ではつまらない!そんな時フッと思い浮かんだのが最近お客さん宅で聴かせて頂いたMarkevitch の ETERNA 826449だ。演奏が素晴らしいのは当然だがETERNA盤がこんなにハイファイ録音だったかな?ハイファイといってもオーディオ的ハイファイではなく自然な音楽的F特の広さを感じる音だ。東欧系らしく少々くすんだ地味な音というのがETERNA盤に対する印象だったが〜それならばと前回試聴に使って素晴らしく良かった Suske の HAYDN 新旧盤をもう一度聴いてみた。バイオリンの響きが実に美しく高域まで澄み切った感じは到底ETERNA盤とは信じがたい。やはり高純度アルミナプレートによる物理振動処理が劇的な改善をもたらしたのだと納得させられた。




MATCHING TRANS

 

こちらはパワーアンプに接続するマッチングトランスとして製作したものです。私のアンプはプリもパワーも比較的ハイゲインなためトランスのレシオ比を高く取る必要がありませんので5倍程の昇圧比(600Ω:15KΩ)で製作しました。このトランスのコアはWE201型インプットや61A/B RETなどを解体したものです。今回はケースによる音の違いを確認するためにWEトロイダル型トランス用鉄ケースに封入してみました。このトランスの最も魅力的なところはF特が広く誇張感のないニュートラルな音楽表現をしてくれるところです。入力系トランスについて少し余談になりますが、インプットトランスではレシオ比を大きくしたもの程トランス特有の癖の強い音の傾向になります。L分によって構成されるインピーダンス変換回路では真空管増幅のような直線性の良さやフラットな周波数レスポンスを持っているわけでは有りません。それはしばしばトランスの2次側を純抵抗でシャントしてF特を平坦化する必要が有ることが、如何にトランス自体がフラットな特性を有していないかを表す根拠のひとつです。ちなみにWEなどの古典アンプ(主に劇場用アンプ)ではインターステージの2次側をシャントしない場合も有りますが、内部抵抗の高いひ弱な球でドライブする場合や高域特性のそれ程良くない装置において特定の周波数帯を持ち上げることで人の声などの明瞭度を上げようと意図している場合も有ります。嘗ての技術誌などではインターステージトランスの二次側を純抵抗でシャントする必要が無いトランスがさも優秀かのようなくだりが有りますが、ひ弱なドライバー管との組み合わせでは十分なドライブ電圧が得られにくいことから、特性が悪くなることは承知の上で敢えて昇圧比を大きくし、スイング電圧を確保するという必然性により二次側をオープンとせざるを得なかったという回路設計上の都合によるものだと理解出来ます。いずれにしても、このような意図的な周波数特性のイコライジングが、本来私たちが目指すハイフィデリティー再生装置に対する考え方とは少し違った方向だということも認識した上で可能な限りフラットなレスポンスの再生装置を構築していかなければならないと思います。



POWER AMPLIFIER


本アンプは新しく製作し直した6AB7-6AG7-INT(WE201 CORE)-4D32pp-5Kpp:0-8-16Ω/50W Output Trans の3段構成で+B供給用電源には371Bと705Aをパラレル接続にしています。4D32というパワー管の凄いところは、一般的な「図体の大きな球は大雑把な音がする」という定説をいとも簡単に覆してくれるだけのF特の広さと繊細さ、緻密さ、圧倒的なエネルギー感など、音楽再生に必要な増幅管としての全てを備えているかのような気にさせてくれるところです。もちろん前段を構成している2本のメタル管も並みの電圧増幅管ではありません。内部抵抗が高くプレート電流が僅かしか流せないWE製 ST型電圧増幅管や音の粗いマグノーバル管、396A等の双3極管は端から選択肢に有りませんが、比較的マトモな音のするKEN-RAD 6C5(METAL管)や6SN7GTなどの3極管がことごとく寝ぼけて聴こえてしまう程本機に使用しているKEN-RAD6AB7や6AG7の3結は色付けが少なくパワフルでシャープな名刀の切れ味のような音がします。要約すれば物理振動が少なく直線性に優れた単5極管を3結で使用することで、並みの3極電圧増幅管とは桁違いの広帯域特性と強力なドライブ能力を兼ね備えた前段増幅回路を構成することが出来るということなのです。
なお、このアンプで使用している6AB7や6AG7のG3はカソードに接続していますが、一般的な真空管アンプでも6J7や6SJ7、WE310A、348A等を3結で使用する際にG3をプレートに接続する回路では明らかにドンシャリ的で下品な音になりますからご注意を。

4D22/4D32 TUBE SOCKET

今回は数年前に海外で見つけた秘蔵のMIL SPEC TUBE SOCKETを現用の4D32パワーアンプに搭載してみました。改めてこのソケットを見てみると現用のJOHNSON 122-101-200とは桁違いの質感で、まさにMIL SPECとはこういうものを指すのだろうと納得させられる仕上がり具合です。ジョンソン製の3倍はあろうかという如何にも頑丈そうな銀メッキ端子は緩みなど有り得ないと言わんばかりの二重リベット止めです。各端子の絶縁には厚手のマイカノールが使用され、G1,G2端子にはセラミック台が使われているという徹底ぶりです。未使用品のデットストック品ではあるがアッセンブリー時に各端子を小容量のチタコンらしきものでアースしているところをみると、設計段階からオーディオグレード等とは桁違いのクオリティーが求められるレーダー機器などの特殊用途として製造されたたものだろうと推測出来ます。



SPEAKER SYSTEM


1200×1500サイズのメイプル集成材をシェラック仕上げにした平面バッフルです。平面バッフルではスピーカーを設置しただけで十分良い音がするなどということは間違っても有りませんから、必ず何らかの方法でルームチューニングが必要になります。ルームチューニングのポイントはライブな環境のオーディオルームの定在波を上手く処理することだと勝手に思っています。低域の出過ぎや全体的に音がボケるなどの原因は定在波を上手く処理することで殆ど解決します。低域の抜けの悪さをアンプのせいにする前にルームチューニングをやることが大切です。しかし、そうはいっても単純に定在波を吸収して減らすのではダメで、如何にピークを作らずに拡散させるかがポイントになります。吸音効果の高い材料で定在波を吸収しバランスを取るルームチューニング材では一聴して効果が上がったかのように感じることが有っても、落ち着いて試聴を重ねれば明らかに情報量が少なくなっていることに気づくはずです。さて、平面バッフルを設置する際どのように支持するかは問題の多いところでもありますが、基本的には響きを止めずにがっちり固定することですが、これが意外に難しいのです。中にはバッフルの不安定さを解消するために左右の端に足を付けて設置している方がいますが、それではせっかくバッフルの端まで響いた振動を止めてしまうことになります。私の設置方法はバッフルが左右に倒れない程度まで出来る限り中央寄りに足を取り付け、バッフルの一番上側から斜め後方に角材を振り下ろして先ほどの足の最後部と連結しています。ここはバッフル全体の振動エネルギーを受止めるところなのでより硬質な桜材などを使いました。また、後方側の連結部は左右に開くようにし、振り下ろした角材は必ず足の内側に固定します。ここを足の外側で連結すると音が濁り易くなります。なお、ローエンドまでクリアな低域を出す目的で後方に延びた足の上にやや厚め(15mm)のファブリックボードを設置しました。敷いた板と足の間やバッフル裏側の桟にはリプラス製水晶インシュレーターを挟み、足そのものも床に直置きせずに100HG-SS HRを前方に100HG-FLAT-SS HRを後方の端に設置しています(最近前方にGR-SSを後方に100HG-SS HRを装着しました)。そして床と水晶の間にはファブリックボードを敷いて床材の吸音を出来るだけ防ぐようにしています。ちなみにSPを設置している床材には桜などよりも硬いカリンを使っていますがそれでも音を吸います。こうすることで、低域が出にくく高域が粗いなどと酷評されることの多いKL439から軽くて歯切れの良い低域と澄んだ高域がバランス良く再現されるようになります。しかしながら、これもハイスピードで余裕たっぷりの電源を持つ4D32ppパワーアンプや4D22ppプリアンプ、WE純鉄コアトランス等の相乗効果が有ってのことだろうと思います。
さて、4D32 TUBE SOCKETを高品質のものに交換してから音が激変したことについては他の項目でも述べましたが、その結果オイロダインが思いもよらない程静かに鳴るようになったので、以前からいつかはやってみようと思っていたバッフル裏の桟を固定している木ネジの殆どを抜いてみました(この桟はバッフル面に木材用接着剤と木ネジを併用して固定しているので木ネジを外しても桟はびくともしないのです)。音楽を再生しながら作業を進めて行ったのだが、面白いことに木ネジを外せば外すほど一層響きが良くなり低域のエネルギー感も素晴らしく良くなってきた(私のバッフルは少々頑丈に作り過ぎたようだ)。4D32用真空管ソケットの換装以降、音楽を聴くのが楽しくてしょうがないという数日だったが、ここに来てまだまだやらなければならないことが結構有りそうだという気がして来たのは困ったものだ。しかし、流石にウーハー周りの50mm角ほどの補強材のネジを外すと少々低域が出過ぎるきらいが感じられてきたのでギリギリのところで止めにした。ここ十数年この難物KLL439スピーカーを鳴らすべくチャレンジして来たが、ここに来て微かにではあるが目標としてきた到達点がやっと見えてきたかのような気がして来たといえば少々思い上がりかもしれない。
最近、今まで使用していたハーモニックディフューザーステージSFS-HDの3枚を少し下に移動しオーディオリプラス ハーモニックディフューザーウォ―ルパネル SFW-HDを横に設置してみました。このところのセレニウム電源のシャーシ天板と底板を真鍮板に変更したことや積層セラミックの取付板をアルミナプレートにした効果なども影響しているとは思いますが、俄然スケールが大きくなって来た感が有りながらも緻密さというか繊細感が抜群で、ETERNA825560やERATOSTU71080が水を得た魚のような鳴りっぷりで SLPM139010などの新旧の音の差も以前にも増して明確に再現されるようになり、オーケストラ物のオーディオファイル盤あたりを鳴らすのが俄然楽しくなって来た。やはりDG盤ブルーラインあたりが普通にバランスよく鳴らなければ完成度の高い装置とはいえないのではないか〜ましてやARCHIV盤MUSICA ANTIQUA KOLNなどの残響の長い超ハイファイ録音盤あたりがマトモに鳴らないようではダメだろう〜レンジの狭い装置に限って高域端をつぶして上手く鳴らしているつもりでいることが多い〜などと勝手な思いにふけりながらのやや興奮気味な試聴ではあったが〜少々落ち着きを取り戻したところで改めて今回のチューニング材の位置変更と追加について自分なりに考察してみた。スピーカー真後ろの天井と壁の境目付近にSFW-HDを取り付けた結果、中高域の分解能とエネルギー感がアップし低域の伸びが抜群に良くなったということは、ほぼ間違いなく壁と天井とのL字型付近の定在波によって中高域帯が打ち消され気味だったのだろうと推測出来る。以前カートリッジの項で「高分解能ゆえに少し古い録音のオーケストラや管弦楽などを再生した際、音楽の一体感のようなものが再現されにくいと感じることが有る」と述べたが、今回の改善によりその原因は意外にも全く別のところに有ったことが判明したという嬉しい結果となりました。


2023/12/02:
昨日まではハーモニックディフューザーウォ―ルパネル SFW-HDをSPの真後ろと天井中央に1枚づつでしたが今日夕方もう1枚が届いたので早速取り付けて試聴してみました。結果は予想通りもう一段階重心が下がったようで一層落ち着いた感じがしてきた。この変化は単なるルームチューニングだけの効果ではなく、数日前に行ったプリアンプの前段管ソケット交換やATT&LCR EQのパーツ取り付けにアルミナプレートを使用したことなどの相乗効果によるものだと思うが、いずれにしても物理振動処理やルームチューニング無くして高品位オーディオ再生装置への到達は難しいという事が一層確実なものになった気がします。ちなみに、今回試聴用に使ったレコードはHaebler PHILIPS 6500848
ERATO STU71197 などですが、どちらも残響の長いリスニングルームでなければつまらない音楽になってしまいそうな演奏です。


2024.02.22:ケーブルの項でも述べたが、またまたルームチューニングを見直してみた。色々と試行錯誤を繰り返して上の画像のようになったが、まぁ〜これもチョイとやっただけでは良し悪しなど判断できるわけもないので暫くこの状態で様子をみることにした。しかしコーナーの定在波処理を充実させると俄然低域の質感が上がるのには少々驚いた。これもスピーカーバッフルの設置場所が比較的狭い空間なうえに壁がオール漆喰という比較的ライブなルーム環境だということも影響しているのだとは思うが、中々良い傾向の音になって来た気がしている。それにつけても、何をやってもコロコロと音の違いを如実に表現してくれるKLANGFILM KLL439+平面バッフルというスピーカーシステムは私にとって何ものにも代えがたい存在となっている。

←現在のSP設置側から見た天井(周りの壁は漆喰)
2024.03.02:最近ふと思いついたのだが、増築などしてしまった関係も有り今までは天井の低い側にスピーカー装置を設置し、天井や後方の壁などの影響を少しでも軽減するための対策として極めて大量の?ルームチューニング材を使用して来たが、今思えば狭い空間故のルームチューニングの難しさを何とか克服すべく苦心して来た感が有る。まてよ、今まで試聴位置としてきた天井まで4m程の高さになっている側をスピーカーの設置にしてみたらどうだろうか。少なくとも今までよりは遥かに開放感のある自然な音楽再生が可能になるのではないか。などとここ数日間思いを巡らしているのだが、さてどうなることやら〜というか、どうもガラス張りのドアの影響が出そうなのが気がかりだ。何故なら、現在のセッティングでは後方壁が完全な箱状の漆喰壁で、スピーカー設置部分から後方の壁までの床も硬いカリン材を使用しているため低域での踏ん張りが効く感じがする。この踏ん張りが有るがゆえに腰砕けのしないローエンドになっているはずで、床や壁が柔いリスニングルームではどうしてもやんわりした音になってしまう傾向が有る。ということを考えると中々難しい状況ではあるが追々やってみようと思っています。



SPEAKER NETWORK

オイロダイン用ネットワークは最初から自分で製作したものを導入することが前提に有りました。オリジナルネットワークのインピーダンスは12Ωで、KL406単体でのインピーダンスが7.5ΩでKL302が12Ωということなのでインピーダンスマッチングのためにウーハー側にマッチングトランスを使用して12Ω:7.5Ωとしていて、このオートトランスが音を悪くしている要因にもなっています。それならばということで、KL406を8ΩとみなしKL302の高域減衰用抵抗とボイスコイルインピーダンスを合成抵抗としてー7db減衰時のCとRを算出し単純な6db/oct -3db クロスとしました。LにはWE針金コアとWEリングコアから外した黒エナメルワイヤー7本撚りを使用し、Cには積層セラミックをシリーズ接続、RにはSPRAGUE BLUEJACKET 10W型巻線抵抗をパラレルで使用。入出力端子はアメリカMillen製セラミック型で配線材にはSPケーブルと同様のWEリッツワイヤーをシルクテープで絶縁しシェラックで含浸したものを使用しています。なお、ネットワークユニットの製作には例によってNASA御用達のファブリックボードの中から1/4 INCH 厚のものを使用。


2024.03.09:ネットワークのコンデンサーや抵抗を取り付けていたバインディングポストを止め、高純度アルミナプレートに今まで使っていたものと同じセラミック型バインディングポストを取り付けてリッツ線で再配線し、入出力端子にもアルミナ製端子台を使用してみた。



SPEAKER CABLE

KL L406 SPEAKER UNIT
スピーカーケーブルにはWE製リッツワイヤーをダブルで使用し極薄100%シルクテープを巻いたケーブルをバイワイヤー結線にしています。最近、シルクカバーの上から音質的にも優れているといわれるシェラック溶液を浸透させ十分乾燥させた後に改めて試聴してみました。全体的な音質的傾向が変わるわけではありませんが、より一層誇張感のない自然な柔らかさと見通しの良さが加わった感じです。WE機器に夢中になっていた20〜30代の頃はWE555+WE596Aや594Aなどを使っていたせいも有り20AWG単線シルク&エナメルワイヤー辺りを使ってその気になっていた時期も有りましたが、当時使用していた205Dppや300Bpp、212A/DなどのWE系直熱管アンプがそこまでの違いを引き出すほどのF特の広さや解像力を持っていなかったという事を実感したのは暫く後になってからのことです。




ISOLATION TRANS & POWER TAP
SBT-4SZ/HG-MK2SR
200V⇔100VアイソレーショントランスにはWESTERN INC製とアメリカ製トロイダル型アイソレーショントランス(1500VA)を使用しています。各アンプのヒーター回路やEMT-930のモーター駆動用にはのトロイダル型から供給し、その他の高圧整流ユニットへの供給にはWESTERN INC製を使用しています。Audio Replas SBT-4SZ/HG-MK2SRへはJODELICA ETP-930RHを通じて供給し, OUTLET BOX から各機器への供給用ACプラグにはAudio Replas RCP-1RUを使用しています。画像左のWESTERN INC製アイソレーション電源は最大115V-44.5A(5KW)の出力を取り出せるものです。さすがにこの巨大さですから多少のうなりも有りますが、音質的には中々の性能を持っていると思います。なお、このトランスの100V出力は音質劣化を極力防ぐためにトランス本体の出力端子からWE単線+リッツ線を使用してSBT-4SZ/HG-MK2SRに接続しています。

2023.12.17:
以前から親しくお付き合いを頂いている同好の皆さんのご厚意によりAC電源のノイズ対策について改めて見直す機会に恵まれたのをきっかけに、今までAudio Replas CSN-7000SZやFURUTECH NCF Clear Lineなどを使用した程度でお茶を濁してきた感のあるプリアンプ&パワーアンプ用ヒーター電源(セレニウムDC 点火回路)とEMT-930への100⇔220VAC供給ラインに今更ながらではあるがAudio Replas SAA-6SZ-MK2RUTパワータップを導入してみた。接続はAC200V⇔AC100V ISO TRANS→本機→HT DC POWER SUPPLY(2台)+100V⇔220V ISO TRANS→EMT930とし、本機へのAC供給にはJODELICA ETP-930RH+FURUTECH NCF BOOSTER、出力ラインにはAudio Replas RCP-1RU & FURUTECH NCF Clear Lineを使用した。JODELICA ETP-930RHはSBT-4SZ/HG-MK2SRへの供給にも使っているので音質的には納得しているが、このところの劇的な値上げ攻勢にはいささかためらいも有りました。しかしながら、質的な意味での競合他社がほとんど無いという現状と、ある程度確証性の高い判断を下すためのリファレンス機器に使用する接続用プラグなどにも一定水準以上のものを使う必要が有るだろうという観点からこの製品を採用した。なお、接続用ケーブルには高額な市販品よりも明らかに音質的優位性の有るWE LITZ WIRE+WE 11AWG WIRE(非メッキ銅単線)を使用することにした。ちなみに、このケーブルをインレットプラグやACプラグに接続する際重宝するのがAudio Replas PIN-55RUだ。硬い金属なので締め付けをしっかりする必要が有るが音は良さそうだ。今回の試聴に使ったレコードはオーディオファイル盤HARMONIA MUNDI HMC1137 などですが、分解能が大幅に改善されたためか超高域までスムーズに音が抜け切るようになってきた気がしています。
2023.12.30:暮も押し迫った今日オーディオリプラスCPP-2SZ/HGコンセントプレートが届いたので、早速先日導入したばかりのSAA-6SZ-MK2RUTから供給しているHT電源&EMT930用に使用しているRCP-1RU ACプラグに使ってみた。コンセントプレートというからには本来壁コンに取り付けるのが一般的だが、私の場合壁コンからは200V⇔100V ISOとなっていて、大型200V用プラグを使っている関係も有り一般的な100V用は使えないので、先ずはこちらのAC出力回路での効果のほどを探ってみようということになった。CPP-2SZ/HGは当時多くのお客さんに紹介し十分効果を実感して頂いているのだが、SAA-6SZ-MK2RUTと併用での効果のほどはまだ未知数だ。あわよくば+B電源系AC供給ラインに使用しているSBT-4SZ/HG-MK2SRの分解能を落とさない音質改善効果に肉薄してくれるのではないかという虫の良い思惑での導入なのだが果たしてどうなることやら。

2024.01.20:ここまで来るとついつい欲が出て、プリ&パワーアンプのHT電源や EMT-930モーター供給側100V電源ラインにも SBT-4SZ/HG-MK2SR か STP-6 あたりを使ってみたいという誘惑にも駆られるが、ここはグッと堪えて先ずは現状のままで暫く試聴を重ねることにした。先ずはこのところやけに興味を持ち始めたブルックナーのDECCA盤 6BB 171/2 を聴いてみました。ウィーンフィルとの相性も抜群で(とはいってもこの時点では他の演奏をマトモに耳にした訳ではないのだが)、あっという間に4面通して聴いてしまった。翌日になってETERNA盤(ヨッフム指揮SKD)も届いたので早速聴いてみたが、四番に限ってはDECCA盤(ベーム指揮VPO)が私の好みだった。DG盤を聴いたことのない私にとっては全てが未知の世界なのだが、嬉しいことにここでもクラシック音楽に精通されている先輩方からのアドバイスがたいへん参考になっています。感謝!


Isotek EV03 SIGMAS
SBT-4SZ-MK2SR
2024.01.25:
先日 IsoTek EV03 SIGMAS というパワーコンディショナーを日頃から大変親しくお付き合いを頂いている皆様方のご厚意により入手させて頂く機会に恵まれましたので、改めて色々とテストしてみたいと思っています。また、先日届いたばかりのSBT-4SZ-MK2SRも現在各アンプのHT電源とEMT930用AC電源にてテスト中ですが、メーカーの添付資料によると100時間のエージングが必要とのコメントも有るので結果を見極めるには暫く時間がかかりそうです。
2024.02.10:今日は午後から少し時間が出来たので前からじっくり聴き比べてみようと思っていたブルックナー五番(ヨッフム指揮)SLPM 138004/005827737/8の両方を立て続けに通しで聴いてみた。恥ずかしながら初体験のブルックナーですが妙にハマってしまいそうな演奏でどちらも甲乙付け難い〜などと偉そうなことをいえる程の音楽通でもないが、好みとしては音質も含めてETERNA盤かなぁ〜という気がする。
2024.03.19:昨日は20年来お付き合いのある同好の士とでもいうべき友人の来訪があり、短い時間では有ったがWEリッツ線の音質効果や200V⇔100Vアイソレーショントランス以降の電源対策とでもいうべきACコンセントプラグやIECプラグ、電源クリーナーや Audio Replas Power Tapなどについての試聴実験や意見交換が出来ました。また、電源ケーブルへのWEリッツ線採用も劇的な質的改善が認められたものの、使用量が余りにも多くなり過ぎるため信号系との配分バランスも必要だろうということで、電源ラインにはこのリッツ線と数十年来使用し続けているトロイダルコアから外した一次側巻線(二重黒エナメルシルクダブル巻線)とのハイブリット使用も良いのではないかということになった。
2024.03.22:さて、先ずは先日比較検証したACプラグやIECプラグについての個人的な見解を一言。ここにきてAC入出力プラグのブレードはメッキの良し悪しもさることながら銅の質の影響が大きいのではないかと考えている。一般的な高純度OFCやタフピッチ銅もいわゆる再生銅を使用しているはずで、鉱山から取り出したヒステリシスの無いバージン銅とは全く別物といって良いと思う。このご時世に資源の少ない日本でバージン銅を入手することなど出来ないということなのだろうが、アメリカのような資源大国で世界屈指のメッキ技術を持つ海洋産業系企業あたりが本気になれば実現可能なのかもしれない。ちなみに1930年代以前のWEトランスから外したワイヤーも間違いなくバージン銅で絶縁体にエナメルや綿、シルクなどの天然素材が使われている。いずれにしてもACプラグやIECインレットなどの単純な構造のものほど素材の良し悪しやメッキ技術がものをいうということが今回の検証でより一層明確になった。私の装置に限ってではあるが国産ロジウムメッキ系はどれも意図的な音作りが耳につく。唯一無二のルテニウムメッキでさえバージン銅+多層ロジウムメッキの自然な音には敵わない。
2024.03.26~28:今日は先日の電源周りの試聴実験を受けて改めて電源関連製品についての試聴結果を考察してみたいと思います。といっても多くの電源装置を所有しているわけでもないので、すでに導入済みのAudio Replas SBT-4SZ/HG-MK2SRとIsotek EV03 SIGMASの一対比較をするくらいが関の山なのですが、オイロダインKLL439を長年使い続けていてクラシック音楽の中でも特にHi-Fi録音盤に精通している心強い友人の同席ということで、いささか心もとない私の独断的判断とは違ってある程度信憑性の高い音質的評価が得られるのではないかという期待を込めての試聴となりました。先ずは現状のままでSTIL盤スコットロスのラモーを聴いてみました。オーケストラのような混濁した演奏では個々の楽器の距離感が今一つ分かりにくいことも有って、敢えてチェンバロソナタというもっとも再生しにくいであろう演奏を選んでみた。ピノックのARCHIV盤バッハでも良かったのだが、こちらはより鮮烈な演奏なので少し控えめで鳴らし易いフランス盤の方を再生してみた。数週間前からAC供給ラインへのリッツ線導入とJODELICAやFURUTECHなどの国産ACコネクターからの脱却を進めてきたことが功を奏したのかもしれないが、劇的に誇張感が無くなったばかりか奥行き感も素晴らしく良くなってきた。次にB電源用ACラインに使用しているオーディオリプラスパワータップSBT-4SZ/HG-MK2SRを外し200V⇔100Vアイソレーショントランスからリッツ線経由でIsotekに接続し、リアパネルの高出力用コンセントに直接B電源供給用ACプラグを接続してみた(プリ&パワー用HT電源とEMT930用ACラインには今まで通りSBT-4SZ-MK2SRを使用)。もちろん先ほどのSBT-4SZ/HG-MK2SRと同様にIsotekにもリプラス製ピンポイント設置(RSI-M6+OPT-30HG-PLHR)を使用しての試聴なのだが、音がつまった感じで奥行き感が無く以前試聴した際の印象とそれ程大きな違いは感じられない。となると接続ケーブルやプラグの問題ではなくIsoteckそのものの音作りがこのような方向性なのだろうと理解せざるを得ない。今回の実験はある意味物性理論に基づいて開発されたAudio Replasと電子工学的理論に基づいた多重フィルター回路で構成されたIsotekとの一騎打ちという構図になったのだが、これはあくまで限られた条件下での個人的印象でありカートリッジやスピーカーシステムなどの条件が異なれば全く別の結果になるのかもしれない。多くの皆さんの装置ではIsotekの導入が大変良い結果をもたらしているということなのだが、こと私の装置では真逆の結果になるのか甚だ疑問ではある。いずれにしてもリッツ線+IEC/ACプラグの試聴実験や電源クリーナーの検証結果を新たな局面への一歩と捉えることが出来るならば、これはこれで有意義な検証実験であったと思います。


FULL-WAVE RECTIFIER HT DC SUPPLY
SELENIUM HT SUPPLY
以前からプリアンプのヒーター点火について色々と実験しては来たのですが、今回、両波整流型DC点火をテストしてみることにしました。元々、当店のプリアンプやパワーアンプは増幅部本体と電源部本体、HV電源の3台のシャーシもしくはHT電源を独立させた4台で構成されていますので、一般的なアンプからすればスペースファクターの悪さは特筆もんで、その上新たに巨大LR独立HT電源なるものを加えるというのは流石にちょっとやり過ぎだろうと思っていたのですが、しかし、今回変更するアンプは6BX7pp構成のプリアンプですのでL/R共通回路で良いのでまだマシかというところで早速完成した電源ユニットをお客様のお宅に持ち込み試聴してみました。なんと傍熱管プリアンプのヒーターDC点火回路を変更しただけで装置が別物になってしまった〜いやいやそれはちょっと言い過ぎですが、そのくらいの表現をしたくなるほどの劇的な音質改善効果は想定外でした。つい先日、4D32ppタイプのプリアンプをご愛用頂いているお客様からのご依頼により製作したLR独立型DC点火ユニットを接続し試聴させて頂きましたが、同様のもしくはそれ以上の効果を実感することが出来ました。WEダイオードと整流回路の変更だけでこれだけの音質改善効果が有るのなら、古くからフィールドスピーカー用励磁電源や光電管エキサイター、バッテリーチャージャーなどに使われたタンガーバルによる両波整流も試してみる必要が有るのではないか?という誘惑にもかられますが、6.3V-8ADC以上にもなる電源2系統をタンガーバルブを使って点火するとなると、今でさえも発熱との戦いになってしまった感のある我オーディオ装置にこれ以上世の省エネムードに逆行するような悪行?は厳に慎まなければ〜と我に返ったところで、それなら熱エネルギーによって電子の移動を促す必要のないセレニウム素子による整流ならどうだろうか。こちらは4D32ppパワーアンプ用なので手っ取り早くシングルチョークで実験。音質は何も言うことが無いといえるほど素晴らしいものになりました。例えれば、今まで使用していたWEダイオードの両波整流が高級デジタル一眼レフの細部までクッキリと見渡せる超リアリティーな表現だとすれば、今回のセレニウム整流は細部まで見渡せる繊細さとリアリティーはそれ程大きくは変わらないが、もう少し自然なボケ味のアナログ中判カメラのような穏やかで優しさを感じさせる音、敢えていうなら、より一層コンサート会場の音に近づいたような気分にさせてくれる音という感じがします。遅きに失した感の有るセレニウム両波整流チョークインプット回路の導入からスタートしたHTDC点火回路の再構築化でしたが、結果的にはアメリカ製ALUMINA CERAMIC PLATE & CERAMIC TERMINAL STRIPによる物理振動対策とCERAMIC CAPACITORによるフィルター回路のハイスピード化が功を奏したのではないかと思います。




HV(+B) POWER SUPPLY

NU371B & WE705A RECTIFIER UNIT
一般的な真空管式オーディオアンプでは両波整流管1本で電源供給をしているものがほとんどですが、当店で製作するアンプでは必ずといっていいほど複数の整流管を使用しています。以前の記述内容と重複する部分も有るかもしれませんが改めてB電圧電源について述べてみたいと思います。個人的にも20〜30代頃まではWE274A/Bや280(ナス管)が最も良い音のする整流管と思い使い続けていた時期も有りました。その後WE 46アンプなどを使い始めると直熱3極管205Dを2極管接続にして半波整流管として使っているのに驚き、何故このような使い方をしているのか?と思いきや何のことはない〜整流ノイズ抑制効果としての役割も果たすことと、緊急時のスペア球の確保が容易という簡単な理由でした。もっとも、整流管製造(特にフィラメント)の難しさもさることながら、比較的内部抵抗の高い205Dなどの直熱3極管を整流管として使用すれば当然ながら音も良いということで一石二鳥とはこのことだと納得しました。その後に開発された274A/Bや280などもオキサイド型両波整流管の中では比較的内部抵抗の高い整流管ということでそれなりに素性の良い整流管といえますが、それはあくまで直熱管アンプに使用する標準的なという意味でのオキサイド型両波整流管に対する評価であって、トリタン型整流管371Bや705Aなどの付帯音の少ないハイスピード半波整流管との比較ではありません。増幅回路の質的向上を目指すプロセスの中でほぼ間違いなく電源回路の不備がネックになることは多くのベテランオーディオ愛好家諸氏が痛感されているであろうと思いますが、願わくばタイミングを失することなくヒーター点火方式を含めて電源の重要性を再認識して頂ければと思います。さて、一般論はこのくらいにして、当時の受信管(ラジオや家庭用電蓄など)としての使用ではオキサイド型両波整流管1本で十分な性能を維持できたということのようですが、はたして強大なダイナミックレンジを有する現代のHi-Fi オーディオ装置にもそのままの形で採用するだけで十分なのだろうか。例えばひとつの例として、通常の管球式オーディオ装置で音量を上げていくと分解能が落ちて刺激的な音になってしまう症状は電源の供給スピードが間に合っていない状態なのではないか。この現象はパワー管が金魚鉢の金魚のように酸欠状態になっているのに似ていると考えられます。逆に満ち足りた電源によって構成されたアンプでは、それ程音質的評価の高くない真空管でも意外に充実したサウンドが得られることが多いのです。当方が好んで使用するトリタンフィラメントを持つ高真空型半波整流管は、高温で熱せられた熱電子がハイスピードで増幅管にエネルギーを供給できるため金魚のような酸欠状態にはなりません。したがって、
比較的広いリスニングルームでコンサートホール並みの音量で音楽を鑑賞しても低域が膨らみすぎることや刺激的な高域になることも殆どありません。
要するに音量の大小によって周波数レスポンスや分解能がほとんど影響を受けないという安定感の有る再生音は電源の質に依存しているということなのです。このことはジャズやボーカルなどの大衆音楽ならいざ知らず、クラシック音楽の繊細で変化に富んだ演奏を再生する上では大変重要なファクターのひとつと思います。ご自身のリスニングルームがちょっとしたコンサートホールに早変わりしたかのような気分で音楽を楽しみたいと願う熱烈な音楽愛好家の皆さんには是非ともトリタン整流管複数使用の素晴らしさを実感して頂きたいものです。


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