KOETSU MC CARTRIDGE ダイナベクター507MKUの高感度アームで最高の性能を発揮出来るカートリッジといえばKOETSU以外に存在しないのではないかと勝手に思っています。画像は初代光悦さんが長年温存していた原石から切り出した気泡の全く無いヒスイケースで、間接音の表現力に長けたトレース能力の高いボロンカンチレバー+プラチナマグネット+WE
OLD MAGNET WIRE仕様というスペシャルバージョンカートリッジです。どんなに優れた高品質カートリッジが出現しようとも、小手先のごまかしなど一切受け入れてくれそうにないオイロダインKl
L439+平面バッフルという類い稀なるスピーカーシステムを使い続ける限り、繊細で残響の長いバロック系の再生において独壇場とも思える程のリアリティーを発揮する光悦スペシャルバージョンカートリッジをおいそれと否定することは出来ません。
MC STEP UP TRANS WE 201 TYPE COREを使用した光悦MCカートリッジ用昇圧トランスで昇圧比は1:15と比較的低めの設定です。入出力端子はWE製を使用し設置用インシューレーターにはAudio Replas GR-SS+RSI-M6を使用しています。WE555Wや594Aスピーカーを使用していた20~40代の頃はWE261Bや208PなどにSPUやTYPE-C、FIRCHILD
225A等を組み合わせてジャズやロックなどを楽しんでいましたが、KLL439スピーカーの導入と共にWE純鉄リングコアを使ったMCトランスを使うようになり、ようやくクラシック音楽が聴けるようになったという気がしました。職業がら比較的多くのMCカートリッジ用昇圧トランスなるものを聴く機会に恵まれましたが、古典的なローコンプライアンス型カートリッジ+パーマロイコア型MC昇圧トランスあたりで情緒的に音楽を鳴らすならそれなりに雰囲気も有りあれやこれやと音の違いを楽しむことも出来るでしょうが、クラシックレコードのオーディオファイル盤あたりを再生して、音の良いコンサートホールの上席にでも身を置いているかのような気分にさせてくれる程のクオリティーを求めるなら、WE系マイクトランスやライントランスなどの流用や親指の先ほどの小型パーマロイコア型MCトランス辺りでは役不足感が否めないのではないかと思います。私たちが求めるHi-Fi再生のためのMCカートリッジ用ステップアップトランスというアナログレコード再生の根幹を成す昇圧トランスにこれぞというものが皆無という状況を踏まえれば、可能な限り質の良いコア(ここでは比較的ブロードな磁気特性を有する純鉄コアを指します)を使い、そのカートリッジのインピーダンスにマッチした昇圧トランスの製作が必要不可欠です。
POWER AMPLIFIER このパワーアンプは6AB7-6AG7-INT(WE201 CORE)-4D32pp-5Kpp:0-8-16Ω/50W Output Trans
の3段構成で+B供給用電源には371Bと705Aをパラレル接続にしています。6.3VのヒーターDC点火はLR独立でセレニウム両波整流チョークインプット回路を採用し、平滑用コンデンサー(2,000MF)は積層セラミック型をアルミナボード上に設置しています(詳しくは下段のHT電源の項参照)。
4D32というパワー管の素晴らしいところは、一般的な認識として「図体の大きな球は大雑把な音がする」という定説をいとも簡単に覆してくれるだけの繊細さと緻密さ、広帯域特性、フラットなエネルギーバランスなど、音楽再生に必要な増幅管としての全てを兼ね備えているかのような気にさせてくれるところです。もちろん前段を構成している2本のメタル管も並みの電圧増幅管ではありません。巷でもてはやされる事の多いST型WE球は内部抵抗が高く付帯音が多いのでHi-Fiアンプ構築という観点からは先ず以って候補に上がることは有りませんが、3極電圧増幅管の中でも比較的マトモな音がするといわれているKEN-RAD
6C5(METAL)や6SN7GTなどがことごとく寝ぼけて聴こえてしまう程本機に使用しているKEN-RAD6AB7や6AG7の3結は色付けが少なくパワフルでシャープな名刀の切れ味のような音がします。要約すれば星の数ほどある電圧増幅管の中でもKen-Rad
6AB7-6AG7の二段増幅は物理振動が少なく直線性に優れた単5極管を3結で使用することで、並みの電圧増幅管とは桁違いの広帯域特性と付帯音の少ない強力なドライブ力を兼ね備えた前段増幅回路を構成することが出来るということなのです。
INTERSTAGE TRANS
私の装置ではプリアンプとパワーアンプの両方にWE201型コアを使用した位相反転トランスを使用しています。どちらもレシオ比は1:1+1で全くゲインのない位相反転だけのためのトランスです。インターステージのように比較的信号の大きい回路でのトランスによる大きなインピーダンス変換は、Hi-Fiアンプの構築という目的を達成しようとする場合必ずしも得策ではないと考えられます。また、インターステージトランスの一次側にDCを重畳する回路では、一聴して力強い感じを受けますがPA用などの装置ならいざ知らず、音楽鑑賞用のHi-Fiアンプには音が粗くて使い物になりません。そうなると必然的にパラレルフィード回路を採用することになりますが、これまたCRの品質の問題が出てきます。WEに夢中になっていた頃はWE製ピッチペーパーや38型抵抗などを使用して一人悦に入っていた時期も有りましたが、今となってはあの付帯音の多い分解能の悪さは如何ともしがたいと思わざるを得ません。そういう中で長い間あれこれ吟味しながら数多くのCRを実験してたどり着いたのがELMENCO
SILVER MICAやSPRAGUE BLUEJACKET WIRE WOUND RESISTORなのです。
HIGH VOLTAGE +B SUPPLY 一般的な真空管式オーディオアンプでは両波整流管1本で電源供給をしているものがほとんどですが、当店で製作するアンプでは必ずといっていいほど複数の整流管を使用しています。以前の記述内容と重複する部分も有るかもしれませんが改めてB電圧電源について述べてみたいと思います。個人的にも20〜30代頃まではWE274A/Bや280(ナス管)が最も良い音のする整流管と思い使い続けていた時期も有りました。その後WE
46アンプなどを使い始めると直熱3極管205Dを2極管接続にして半波整流管として使っているのに驚き、何故このような使い方をしているのか?と思いきや何のことはない内部抵抗の高さが整流ノイズ抑制効果としての役割も果たすことと、緊急時のスペア球の確保が容易という理由だったのではないかと考えられます。もっとも、整流管製造の難しさもさることながら、内部抵抗の高い205Dなどの直熱3極管を整流管として使用すれば当然ながら音も良いということで一石二鳥とはこのことだと納得しました。その後に開発された274A/Bや280などもオキサイド型両波整流管の中では比較的内部抵抗の高い整流管ということでそれなりに素性の良い整流管といえますが、それはあくまで一般的なアンプに使用する標準的なという意味でのオキサイド型両波整流管に対する評価であって、トリタン型整流管371Bや705Aなどの付帯音の少ないハイスピード半波整流管との比較ではありません。オーディオアンプの質的向上を目指すプロセスの中でほぼ間違いなく電源回路の不備がネックになることは多くのベテランオーディオ愛好家諸氏が痛感されているであろうと思いますが、願わくばタイミングを失することなくヒーター点火方式を含めて電源の重要性を再認識して頂ければと思います。ご自身のリスニングルームがちょっとしたコンサートホールに早変わりしたかのような気分で音楽を楽しみたいと願う熱烈な音楽愛好家の皆さんには是非ともトリタン整流管+チョークインプット整流方式の音の良さを体感して頂きたいものです。